ファドゥーツ城

ファドゥーツ城：リヒテンシュタイン侯国の象徴

ファドゥーツ城は、アルプス山脈に囲まれた小さな国、リヒテンシュタイン侯国の首都ファドゥーツにそびえ立つ、歴史深い城です。侯爵家の居城として現在も使用されているこの城は、近隣の丘々からその威容を眺めることができます。その歴史は古く、中世にまで遡ります。

歴史：12世紀から現代へ

ファドゥーツ城の起源は、12世紀頃までさかのぼると伝えられていますが、詳細な記録は残されていません。現存する最古の記録は、1322年のウルリッヒ・フォン・マッシュ代官による城と領地の取得に関する文書です。この文書によると、彼は銀400マルクでファドゥーツ城とその周辺領地、そして住民を獲得したとされています。城の建設者については定説がなく、サルガンス伯爵領を治めた伯爵であったと推測されています。

城の主郭と東側部分は、12世紀頃の建設とみられており、その堅牢な構造は当時の技術の高さを物語っています。塔は12m×13mの地面に建ち、1階の壁面は厚さ4mにも及びます。元々の入り口は中庭側に面しており、高さは11mと非常に高く、堅固な防御施設であったことが想像されます。聖アンナ礼拝堂は中世の建築様式を示しており、主祭壇は後期ゴシック様式の美しい装飾が施されています。

1499年には、シュヴァーベン戦争においてスイス原初同盟による放火被害を受けました。その後、17世紀にはカスパー・フォン・ホーエネムスによる増改築が行われ、城は規模を拡大しました。

1712年、リヒテンシュタイン家がファドゥーツの領地と城を手に入れました。これは、リヒテンシュタイン侯国の成立にも繋がる重要な出来事です。神聖ローマ皇帝カール6世は、1699年にリヒテンシュタイン家が取得したシェレンベルクの統治権を、ファドゥーツ領と統合し、リヒテンシュタイン侯国を成立させました。この出来事により、ファドゥーツ城は侯国の象徴として、その歴史に新たな一章を刻みました。

20世紀以降の変遷

20世紀に入ると、ファドゥーツ城は幾度かの大規模な修復工事を経ています。1905年、1920年、そして1920年代初頭にはヨーハン2世の治世下で改修が行われました。1930年代初頭にはフランツ・ヨーゼフ2世による拡張が行われ、現在の姿へと近づいていきました。1938年以降は、リヒテンシュタイン家の第一の居城として利用されています。

現在もリヒテンシュタイン家が居住しているため、城内は一般公開されていません。しかし、その威容は、訪れる人々にリヒテンシュタイン侯国の歴史と伝統を感じさせます。

警備体制：歴史と現代

中世以来、ファドゥーツ城は、潜在的な農民蜂起などからの避難場所としての役割も担っていました。そのため、城の警備は歴史的に重要な意味を持っています。時代とともに警備体制は変化し、現在は2人の警察官による巡回と正門に常駐する1人の警備員という体制になっています。第二次世界大戦後、リヒテンシュタイン家に対する襲撃未遂事件は発生していません。

ファドゥーツ城は、その歴史と建築、そして現在も続く侯爵家の居住という事実から、リヒテンシュタイン侯国を象徴する存在であり続けています。その雄大な姿は、訪れる人々に深い印象を与え、歴史の重みを感じさせてくれるでしょう。

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