ファミソン8BIT

『ファミソン8BIT』は、シンガーソングライターの桃井はるこが発表したカバーアルバムであり、彼女の代表作の一つです。このアルバムは、1980年代から1990年代初頭にかけて人気を博したアニメ作品の主題歌を、ファミコンの音源を用いてチップチューンアレンジでカバーした点が特徴です。桃井はるこは、自身のオリジナル作品に加え、数多くのカバー作品をリリースしており、『ファミソン8BIT』は彼女にとって初のカバーアルバムであると同時に、ファミソンシリーズの第一弾という位置づけも持っています。

アルバムに収録されている楽曲は、「タッチ」（『タッチ』より）、「ラムのラブソング」（『うる星やつら』より）、「ロマンティックあげるよ」（『ドラゴンボール』より）など、誰もが一度は耳にしたことのある名曲ばかりです。これらの楽曲は、すべて阿保剛によってファミコン音源で編曲されており、桃井はるこの歌唱も、そのレトロな音色に合わせた独特の声音で統一されています。これにより、原曲の持つ魅力はそのままに、新しい魅力が引き出されています。

特筆すべきは、ゲーム『アイドル八犬伝』の劇中歌「きみはホエホエむすめ」のカバーです。この曲は、元々ゲームに音声が付いていなかったため、『ファミソン8BIT』で初めて声が当てられました。このカバーバージョンは、萌えソングの始祖とも呼ばれており、アルバム収録曲の中でも特に人気が高い楽曲の一つです。ゲーム音楽の祭典で度々実演され、2011年には原作者たちによって桃井らを用いて再制作もされています。

アルバムのライナーノーツには、8-bit時代のドット絵で描かれた物語が掲載されています。その内容は、ドルフィンアイランドに住む少女ソラがゲームをしていると、ウーパールーパーの姿をしたモモが現れ、ゲーム世界の魔王を封印するためにソラの歌声が必要だと頼み、ソラがアイドル歌手momo-iに変身して旅立つというものです。この物語は、アルバムの世界観をより深く理解するためのヒントを与えてくれます。

『ファミソン8BIT』は、懐かしいアニメソングを新たな形で楽しめるだけでなく、桃井はるこの音楽的な才能や、チップチューンという音楽ジャンルの魅力を再発見できる作品です。当時を知る世代にとっては懐かしく、若い世代にとっては新鮮に響くことでしょう。

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