ファミリーサーチ

ファミリーサーチとは

ファミリーサーチ（FamilySearch）は、系図記録、教育、ソフトウェアを提供する非営利団体で、末日聖徒イエス・キリスト教会（モルモン教）によって運営されています。1894年にユタ系図協会として設立されたこの団体は、世界最大規模の系図組織へと発展しました。

主な目的

ファミリーサーチの主な目的は、人々が家族の歴史をより深く学べるように、膨大な記録、リソース、サービスを提供することです。また、亡くなった親族のために末日聖徒の儀式を円滑に行うための情報収集も重要な役割です。

サービス内容

ファミリーサーチは、以下のようなサービスを無料で提供しています。

FamilySearch.org: インターネットで最も利用されている系図サイト。
家族歴史図書館: ユタ州ソルトレイクシティにあり、膨大な系図資料を所蔵。
* 家族歴史センター: 世界140カ国以上に5,100以上の拠点を展開し、個人的な支援を提供。

歴史

ユタ系図協会

ファミリーサーチの前身であるユタ系図協会（Genealogical Society of Utah, GSU）は、1894年11月1日に設立されました。協会の目的は、会員や一般の人々が利用できる家系図図書館を設立し、系図に関する教育情報を提供し、亡くなった人々への宗教的儀式を円滑に行うための系図情報を収集することでした。

末日聖徒イエス・キリスト教会では、死者のためのバプテスマという儀式があり、そのために先祖の系図が必要となります。協会は教会の指導のもと設立され、初代会長にはフランクリン D. リチャーズが任命されました。

協会は1910年から1940年まで『ユタ系図・歴史マガジン』を発行し、1938年からは重要な家系記録のマイクロフィルム化を開始しました。1963年には、マイクロフィルムのコレクションは長期保存のため、グラナイト・マウンテン記録保管庫に移されました。

1975年、ユタ系図協会は末日聖徒教会の系図部門となり、後に家族歴史部と改称されました。部門長は常務理事から会長となりましたが、「ユタ系図協会会長」という職名は引き続き使用されました。

2000年には、家族歴史部と歴史部が統合されましたが、後に再び分離し、家族歴史部は独立した部門となりました。

ファミリーサーチの誕生

1998年、ユタ系図協会は記録のデジタル画像化を開始し、同年8月頃には教会の指導者たちが家系図ウェブサイトの開設を決定しました。1999年5月にウェブサイト「ファミリーサーチ」が一般公開され、その人気は非常に高く、アクセス過多で一時閉鎖されたほどでした。

2009年には、教会員向けに共同系図「新ファミリーサーチ」が開始されました。これは現在の「ファミリーサーチ家系図」の前身であり、複数の家系図を統合する試みでしたが、編集や情報追加に制限がありました。2011年からはより協調的なプラットフォームへの再編が計画されました。

2011年、ウェブサイトのデザインが大幅に変更され、複数のデータベースを同時に検索できるようになりました。2012年には新しい家系図データベースが公開され、「新ファミリーサーチ」は廃止されました。2013年には「家系図」が一般公開され、誰でも利用できるようになりました。

2013年にはサイトデザインが刷新され、インタラクティブなファンチャートや印刷機能、写真追加機能などが追加されました。2014年にはAncestry.com、findmypast、MyHeritageInといった企業との提携が発表され、大規模なデータベース共有が行われるようになりました。また、BillionGraves社との提携により、墓地写真も家系図にリンクできるようになりました。

2015年末には、11億人分の個人が「家系図」に追加され、2017年にはマイクロフィルムの配布が停止されました。2018年には20億件目のデータがデジタル化されました。

事業内容

ルーツテック

ファミリーサーチ・インターナショナルは、2011年から毎年、家族の歴史と技術に関する会議「ルーツテック」を開催しています。この会議は、系図学者、技術開発者、教会員などが参加し、家族史研究における最新技術や知識を共有する場となっています。2017年には、世界最大の家族歴史技術会議であるとされました。

ウェブサイト

ファミリーサーチのウェブサイトは、系図記録のデジタル画像と索引へのアクセスを提供しており、膨大な記録を検索できます。記録へのアクセスは無料ですが、一部の記録は家族歴史センターや教会員に限定されています。ウェブサイトには、家族歴史図書館の目録も含まれており、世界中の家系図資料を閲覧することができます。

ファミリーサーチ家系図

ファミリーサーチ家系図（FamilySearch FamilyTree, FSFT）は、家系図に記録された個人を統合したデータベースです。ユーザーは自由に人物の追加や関係付け、重複の統合を行うことができます。情報源、画像、音声ファイルなどを人物に添付することも可能です。

教会員向けには、教会の儀式を円滑にする特別な機能があります。ホロコースト犠牲者や著名人に対しては、不正利用を防ぐため、調査者が正当な親族関係を証明するまでアカウントが一時停止されます。

ファミリーサーチは、同性婚の情報も入力できるようになっています。

索引作成プロジェクト

ファミリーサーチの記録検索を可能にする索引は、「ファミリーサーチ索引作成プロジェクト」のボランティアによって作成されています。精度を高めるため、索引担当者が作成した記録は、熟練した索引者によってチェックされます。このプロジェクトには、教会員以外の人も参加することができます。

2013年には、10億件の索引付き記録がオンラインで提供されるという目標を達成しました。

教育

ファミリーサーチは、ウェブサイト上で無料の講座を提供し、先祖の発見方法を学ぶことができます。これらの講座は、初心者から経験豊富な研究者までを対象としており、幅広い内容をカバーしています。

ファミリーサーチは、家族歴史研究ウィキ（Family History Research Wiki）を運営しており、ユーザーが情報源や研究のヒントを共有できる場を提供しています。

コミュニティ

2009年からフォーラムサイトが開始され、特定の苗字や家系図に関するグループで議論が行われました。フォーラムは2012年に閉鎖されましたが、読み取り専用形式で閲覧できます。2018年には、「ファミリーサーチ・コミュニティ」と呼ばれる新しいコミュニティフォーラムが開始されました。

ファミリーサーチの利用者の多くは、コミュニティやFacebookグループを立ち上げ、メンバー同士で家系図調査に関する質問に答えたり、翻訳を支援したりしています。

モバイルアプリ

ファミリーサーチには、「ファミリーサーチ・ツリー」と「ファミリーサーチ・メモリーズ」という2つのモバイルアプリがあります。これらのアプリはiOSとAndroidで利用でき、10の言語に対応しています。「ファミリーサーチ・ツリー」アプリでは、ウェブサイトのほとんどの機能が利用でき、「ファミリーサーチ・メモリーズ」アプリでは、家系図の思い出を記録することができます。

施設

家族歴史図書館

ファミリーサーチは、ユタ州ソルトレイクシティに家族歴史図書館を運営しています。この図書館は、国際的な家系資料のマイクロフィルム、書籍、デジタル資料を所蔵しており、一般に公開されています。

グラナイト・マウンテン記録保管庫

ファミリーサーチは、所蔵記録の複製を保管するため、グラナイト・マウンテン記録保管庫を建設しました。この保管庫には、マイクロフィルムやマイクロフィッシュが大量に収納されています。

家族歴史センター

ファミリーサーチは、世界140カ国に5,100以上の家族歴史センターを運営しており、系図調査を支援しています。

論争

2008年、バチカンは「死者のためのバプテスマ」を「誤ったもの」とし、末日聖徒が教区記録を使うことを禁止しました。

ファミリーサーチは、世界中の人々の家族史探求を支援する重要な組織として、今後も活動を続けていくでしょう。

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