ファランクス (火器)

ファランクスCIWSの詳細

ファランクス（Phalanx）は、アメリカで開発された近接防空武器システム（CIWS）です。このシステムは、M61「バルカン」と呼ばれる20mmの多銃身機銃と捕捉・追尾レーダーを統合して構築されており、特に対艦ミサイルや小型高速目標の全自動迎撃を実現しています。ファランクスはアメリカ海軍においてMK 15の名称で公式に採用され、広く「バルカン・ファランクス」として認知されています。

背景と開発の経緯

ファランクスの開発は、1960年代にソビエト連邦がK-10SやP-15など高性能な対艦ミサイルを配備したことに端を発します。当時、西側諸国の海軍はこれらのミサイルの脅威を十分に理解しておらず、実戦経験もなかったため、防御能力の向上が急務となりました。

この状況において、1967年に発生したエイラート事件は、旧式の駆逐艦が小型のミサイル艇に撃沈されるという驚愕の結果をもたらしました。この事件は、西側海軍に大きな衝撃を与え、対艦ミサイル防御（ASMD）強化の必要性を明確にしたのです。

アメリカ海軍は当時、タロスやテリア、ターターといった艦対空ミサイルを搭載していましたが、これらは主に中距離の有人機への対応を想定したものであり、短距離の防御手段が不足していました。そのため、近接武器システムの開発が検討され始めたのです。1973年から1974年にかけて艦上テストが行われ、1978年には量産が始まりました。

構造と機能

ファランクスCIWSは、主にM61「バルカン」 20mm多銃身機銃から構成されており、この機関砲は高い発射速度が特長です。最新のブロックバージョンでは、発射速度が毎分4,500発にまで向上しています。また、全天候型の捕捉・追尾レーダーを併せ持ち、効率的に対象を捉えて攻撃する能力を備えています。

このシステムは甲板上に簡単に設置可能で、冷却水の供給や操作用電源を艦船から受けることで独立して運用されます。設置面積が小さく、全備重量も軽いため、小型艦艇から大型艦艇まで幅広い艦に搭載されています。実際、1977年の試験では高い信頼性を記録し、故障率の低さが証明されました。

先進的な射撃と制御システム

ファランクスのセンサー部には、捜索および追尾レーダーが搭載されています。これらは高速で移動する目標を自動で探知し、追尾から命中に至るまでの一連のプロセスを自動化しています。この高い自動化により、敵の襲来に迅速に反応できます。

システムは、捕捉した目標の現在位置と飛翔する弾丸の位置をリアルタイムで追跡し、両者のズレを計算して修正射撃を行います。アメリカ海軍では、1目標の探知から攻撃開始まで約2秒しかかからず、最大射程は約1,500メートルとされています。

進化とバージョン

ファランクスは、開発以来常に改良が加えられています。例えば、Block1Aでは、電子計算機が更新され高機動目標への対応能力が高められ、Block1Bでは光学式目標追尾装置が導入されました。これにより、対水上射撃モードも追加されています。

採用と国際展開

ファランクスは、アメリカ海軍だけでなく21か国以上の海軍にも採用され、870セット以上の配備が行われています。特に、日本の海上自衛隊でも「高性能20mm機関砲」として使用されています。日本では、様々な護衛艦に標準装備されており、近年も改修が進められています。

実戦での使用

ファランクスは、湾岸戦争をはじめとする実戦において実績を残しています。特に、イラク軍からのミサイル攻撃に対し誤射事件が発生したことがあるものの、標的への効果的な防衛が確認されています。これにより、システムの信頼性と攻撃能力が広く認識されることとなりました。

まとめ

ファランクスは、艦艇を防御する最前線のシステムとして、世界中の海軍に重要な役割を果たしています。その軽量でコンパクトな設計、高度な自動追尾機能、そして迅速な発射能力により、現代の海上戦力に不可欠な要素となっています。

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