ファーストサーバ

ファーストサーバ株式会社

ファーストサーバ株式会社（英: Firstserver, Inc.）は、かつて存在した日本の企業です。主な事業内容はホスティングサーバーを中心とするサービス提供で、本社は大阪市中央区に置かれていました。

沿革

同社の歴史は1996年7月にクボタシステム開発株式会社（現在のクボタシステムズ）がレンタルサーバー事業を開始したことに始まります。1999年9月にはレンタルサーバーサービス「ファーストサーバ」を立ち上げ、翌2000年6月にファーストサーバ株式会社として独立しました。その後、ドメイン登録サービス（2001年2月）やグループウェア、メールウイルス駆除サービス（2001年9月、2002年3月）など、提供サービスを拡充。2003年7月には専用サーバーサービスも開始しました。

2004年11月にはヤフー株式会社の子会社となり、事業基盤を強化。2005年8月にはWindows DOT-NETレンタルサーバーサービス、2007年11月には管理者権限を開放したレンタルサーバーサービスを開始するなど、技術的な進化も見られました。2009年10月には仮想専用サーバーサービス、2011年1月にはEC-CUBEクラウドサービスを提供開始するなど、クラウド関連のサービスにも注力しました。

大きな転換期は2015年2月で、親会社であるヤフーが提供するIaaS型クラウド基盤を活用した新サービスブランド「Zenlogic」を開始。しかし、2018年3月には親会社がヤフーからソフトバンク株式会社に変更されました。そして、2019年4月1日、株式会社 IDCフロンティアに吸収合併され、法人としては解散しました。

主な出来事（事件・事故）

ファーストサーバ株式会社は、事業運営中にいくつかの重大な出来事を経験しています。

社長逮捕事件

2008年4月19日、当時の岡田良介社長が東海道新幹線の車内で公然わいせつの疑いで逮捕されるという事案が発生しました。これを受け、翌日には臨時取締役会が開催され、岡田社長の辞任と森川裕和副社長の新社長就任が決定されました。

データ全消失事故

同社にとって最も影響が大きかったのは、2012年 6月20日に発生した大規模なデータ消失事故です。この事故では、顧客のウェブサイトデータだけでなく、メールやグループウェアのデータ、さらにはバックアップデータまでもが完全に消失しました。

事故の経過と原因:

事故は、特定のサーバー群に対して実施された脆弱性対策プログラムの適用作業中に発生しました。このプログラムは事前に検証環境での動作確認が行われていましたが、不具合を含んでおり、検証環境下の確認や防止機能が十分に機能しませんでした。また、メンテナンス時のバックアップ仕様が変更されていたことも影響しました。

最も致命的だったのは、本来対象サーバーのみに適用されるべきプログラムのバグにより、接続されていた全ての環境（検証、本番、バックアップ）に同時に不具合が適用されてしまったことです。これにより、広範囲かつ決定的なデータの消失を招きました。この事故の背景には、社内マニュアルを順守しない作業手順があったと指摘されています。

復旧時の問題と情報漏洩:

消失を免れた一部のバックアップ環境を用いてデータ復旧が試みられましたが、ここでも問題が発生しました。復旧プログラムの理解が不十分なまま実行された結果、不正なリカバリーファイルが作成され、内容を確認せずに提供されたことで、ファイルの誤参照が発生しました。さらに、この復旧プログラムによって、一部顧客がアクセス権限を持たない他顧客のデータを閲覧・ダウンロードできる状態となり、二次的な情報漏洩事故も発生しました。同社は情報漏洩の可能性のある顧客に対し、電話でデータの削除を依頼する対応を取りました。

事故に関する見解:

この事故に対して、ファーストサーバはインターネット上で厳しい批判にさらされました。外部からは、より徹底したデータバックアップ体制（例えば隔離バックアップ）を求める声が多く上がりました。しかし、手間を理由に、公式な再発防止策以外は実施されていないという見解も示されました。

一方で、社内マニュアル順守では対応しきれないほどの日常的な作業量があり、担当者が作成した自動化プログラムに依存せざるを得ない状況であったことも推察されています。

損失:

この事故により、筆頭株主であったヤフー株式会社は、損害賠償などの費用として「システム事故関連損失」を特別損失に計上し、その額は12億1900万円に上りました。

Zenlogic全停止事故

「Zenlogic」ブランドでのサービス提供中にも障害が発生しています。2018年6月19日以降、サービスで断続的な接続障害が発生し、メール送受信やウェブサイト閲覧などが困難となりました。これに対応するため、ファーストサーバは異例の長時間にわたるサービス全停止を伴う緊急メンテナンスを発表しましたが、告知されていた期間を超過してサービス再開が大幅に遅延する事態となりました。

ファーストサーバ