フアン・バウティスタ・サカサ

フアン・バウティスタ・サカサ：ニカラグアの激動の時代を生きた大統領

フアン・バウティスタ・サカサ（1874年12月21日 - 1946年4月17日）は、20世紀初頭のニカラグア政治において重要な役割を果たした人物です。彼は1933年から1936年までニカラグアの大統領を務めましたが、その政治的キャリアは、内戦、アメリカの介入、そして国内の権力闘争に翻弄されるものでした。彼の生涯を振り返り、ニカラグアの激動の時代における彼の足跡を辿ります。

生い立ちと教育

サカサはニカラグアのレオンで生まれ、1889年からアメリカ合衆国に留学しました。コロンビア大学で医学博士号を取得後、故郷に戻り、レオンの国立大学で教授および学部長として教鞭を執りました。彼はホセ・サントス・セラヤ率いる自由党政権の支持者であり、政治の世界に足を踏み入れます。

大統領への道

1924年、サカサは保守党穏健派のカルロス・ホセ・ソロルサノが率いる政治連合に参加し、政界での存在感を高めていきました。しかし、その後ソロルサノ政権が打倒され、政治的な混乱の中、サカサはメキシコへ亡命を余儀なくされます。1926年、プエルト・カベサスで保守党政権に対する内戦が勃発すると、サカサはニカラグアに帰国し、立憲大統領制を主張してプエルト・カベサスに政府を樹立しました。

自由党のホセ・マリア・モンカーダの指揮の下、メキシコからの支援を受けた自由党反乱軍は、首都マナグアの占領に迫ります。しかし、アメリカ合衆国の介入により、エスピーノ黒人協定が締結され、紛争は一時的に収束します。サカサは当初この合意に抵抗しましたが、最終的にはモンカーダが協定に署名しました。この協定に基づき、アメリカ海兵隊がニカラグアに駐留し、アウグスト・セサル・サンディーノが彼らに対してゲリラ戦を展開することになります。

大統領としての苦難

1932年、サカサは大統領選挙で勝利し、1933年1月1日に大統領に就任しました。しかし、その道のりは決して平坦ではありませんでした。アメリカ大使の強い要請を受け、サカサは親米保守派のアナスタシオ・ソモサ・ガルシアを国家警備隊の局長に任命します。これが後に、彼自身を苦しめることになります。

サカサはサンディーノとの和平交渉を行い、サンディーノは新政府への忠誠を誓いますが、国家警備隊の解散を求め続けます。1934年2月、ソモサの命令によりサンディーノが暗殺され、サカサの権力基盤は大きく揺らぎます。ニカラグア経済は世界恐慌の影響によるコーヒー価格の暴落に見舞われ、1934年の議会選挙では不正疑惑が浮上し、サカサの支持率は低下の一途を辿ります。

失脚と亡命

その間、ソモサは着々と勢力を拡大し、モンカーダやチャモロといった大統領経験者との関係を構築していきます。1936年初頭、ソモサは国家警備隊を利用してサカサに忠実な地方公務員を粛清し、自らの支持者に入れ替えました。そして、1936年6月9日、サカサは大統領を辞任させられ、ソモサによって傀儡政権が樹立されます。翌年にはソモサ自身が大統領に就任し、ニカラグアはソモサ一族による長期独裁政権の時代を迎えることになります。

失脚後、サカサはアメリカ合衆国に亡命し、10年後の1946年にロサンゼルスで亡くなりました。

家族

サカサは、第66代ニカラグア大統領レオナルド・アルゲロのいとこであるマリア・アルゲロ・マニングと結婚し、4人の子供をもうけました。また、ベルタ・ラカヨ・サカサはいとこにあたります。

フアン・バウティスタ・サカサは、ニカラグアの激動の時代を象徴する政治家の一人です。彼の政治的キャリアは、アメリカの介入、国内の権力闘争、そして経済的な苦難に翻弄され、その生涯はニカラグアの歴史における重要な一章として語り継がれています。

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