フィラエ神殿

フィラエ神殿について

フィラエ神殿（フィラエしんでん）は、エジプト南部のアスワン近郊に位置するヌビアの遺跡であり、古代の歴史と文化を強く感じさせる場所です。この神殿は主にイシス女神を祀る目的で建設されました。現存する建物はプトレマイオス朝時代に由来し、その後ローマ時代にも拡張が加えられました。

神殿の所有者であるイシスは、愛、家庭、魔術の女神として有名で、彼女に捧げられたフィラエ神殿は、古代エジプトを代表する宗教的聖地の一つとなりました。4世紀末には、ローマ皇帝テオドシウス1世が帝国内の全ての古代神殿を閉鎖しようとする動きがありましたが、フィラエ神殿は強い抵抗を示しました。453年には周辺地域の宗教的自由が条約として結ばれ、この神殿は約100年間その存在を維持しました。

550年には、東ローマ皇帝ユスティニアヌス1世の命により再び閉鎖され、その後は四つのキリスト教教会として使われるようになりました。この時期には、フィラエ神殿の重要性が減少し、他の信仰の場に変わっていく運命を辿ります。

20世紀に入ると、アスワン・ダムの建設の影響でフィラエ神殿は半水没状態に置かれました。さらに上流にアスワン・ハイ・ダムが建設されることとなり、フィラエ神殿の保存が危惧されるようになったため、1980年にユネスコの手によりフィラエ島からアギルキア島へ移設されることが決まりました。現在、アギルキア島はフィラエ島として知られており、正確にその文化的価値を引き継いでいます。

世界遺産としての位置付け

フィラエ神殿は1979年にユネスコの世界遺産に登録され、「アブ・シンベルからフィラエまでのヌビア遺跡群」の一部としてその価値が認められました。この登録は、以下の基準に基づいて行われています。

• - (1) 人類の創造的才能を表現する傑作であること。
• - (3) 消滅した文化伝統または文明の唯一またはきわめて稀な証拠であること。
• - (6) 顕著で普遍的な意義を有する出来事や信仰に直接的または明白に関連すること。

これらの基準により、フィラエ神殿は古代エジプトの歴史や文化の重要な象徴とされており、訪れる人々に深い感銘を与えています。

関連項目

フィラエ神殿の周辺には他にも興味深い名所が存在します。その一つがフィラエ・オベリスクで、古代の巨石構造物としての役割を果たしています。また、宇宙機関（ESA）の彗星探査機「ロゼッタ」に搭載された着陸機もフィラエ島から名を取って“フィラエ”と呼ばれています。さらに、フィラエ島近くに位置するセヘル島には遺跡があり、歴史的な探究を求める訪問者にとって魅力的なスポットとなっています。

フィラエ神殿は、その壮大さと歴史的背景から、訪れるすべての人に深い感動と学びの場を提供し続けています。

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