フィリップホフの戦い

フィリップホフの戦い：スコットランド内戦の転換点

フィリップホフの戦いは、1645年9月13日にスコットランド南東部のセルカーク近郊で繰り広げられた、清教徒革命（三王国戦争）における重要な戦いです。この戦いで、盟約派（カヴェナンター）が王党派のモントローズ侯爵ジェイムズ・グラハムを破り、スコットランド内戦の局面を大きく変えることになりました。

戦いの背景

キルシスの戦いで盟約派に大勝したモントローズ侯は、その勢いを駆ってグラスゴーを占拠し、チャールズ1世の名の下に議会召集を試みました。一時はスコットランドの大部分を制圧し、盟約派の幹部たちがスコットランドから逃亡するほどでした。イングランドの王党派もこれに呼応し、モントローズ侯に大きな期待を寄せていました。しかし、イングランドでは議会派との内戦（第一次イングランド内戦）が激化しており、王党派はネイズビーの戦いで大敗を喫していました。

チャールズ1世はイングランドを転々としながら抵抗を続けていましたが、カンバーランド公ルパートがブリストルを議会派に明け渡したことで、劣勢は決定的になっていました。チャールズ1世は、モントローズ侯が援軍を率いて現れることを期待し、北上して合流しようとしていました。

しかし、モントローズ侯の状況もまた深刻でした。スコットランド王党派の軍はハイランド兵の離脱やアラスデア・マッコーラの私情による離脱などにより弱体化しており、盟約派のイングランド派遣軍がスコットランドへ帰還することになりました。盟約派の将軍デイヴィッド・レズリーが騎兵隊を率いてイングランド国境を越え北上すると、モントローズ侯の手元にはわずか700人の兵しか残っていませんでした。

戦闘の経過

モントローズ侯はセルカークで盟約派の軍を迎え撃とうとしましたが、脱走兵を通じて情報が盟約派に筒抜けになっていました。9月13日早朝、レズリーはセルカークから2マイル離れたフィリップホフにいたアイルランド兵200人に奇襲を仕掛けました。少数だったアイルランド兵はすぐに包囲され、セルカークにいたモントローズ侯が駆けつけようとした時には、すでに手遅れでした。アイルランド兵は虐殺され、モントローズ侯の軍も分裂して敗走しました。この戦いの結果、スコットランド王党派の南下は阻止され、盟約派が主導権を奪い返すことになりました。

戦いの影響

フィリップホフの戦いは、スコットランド内戦の転換点となりました。モントローズ侯は力を失い、チャールズ1世との合流の望みも絶たれました。チャールズ1世はニューアークからオックスフォードへ退却し、1646年には盟約派の軍に連行されることになります。モントローズ侯は大陸へ亡命し、その後1650年にスコットランドで再び挙兵しましたが、盟約派に捕らえられて処刑されました。

この戦いは、単に一つの戦闘の勝敗にとどまらず、スコットランドにおける政治的勢力のバランスを大きく変え、その後のイングランド内戦にも影響を与えました。モントローズ侯の敗北は、王党派の勢いを削ぐことになり、議会派の勝利を決定づける要因の一つとなったと言えるでしょう。

参考文献

ナイジェル・トランター著、杉本優訳『スコットランド物語』大修館書店、1997年。
松村赳・富田虎男編『英米史辞典』研究社、2000年。
* シセリー・ヴェロニカ・ウェッジウッド著、瀬原義生訳『イギリス・ピューリタン革命―王の戦争―』文理閣、2015年。

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