フィリップ・ラーキン

フィリップ・ラーキン：英国詩壇の孤高の詩人

フィリップ・ラーキン (1922年8月9日 - 1985年12月2日) は、20世紀イギリスを代表する詩人として知られています。イングランド中部の都市コヴェントリーに生まれ、名門オックスフォード大学で学びました。大学卒業後は図書館司書として働き、1955年からはハル大学図書館に勤務。その傍ら、詩作に没頭し、独自の詩世界を築き上げました。

ラーキンの詩は、洗練された言葉選びと、鋭い観察眼に基づいた描写が特徴です。日常の些細な出来事や風景、人間関係の機微を、独特のユーモアと皮肉を交えながら描き出しています。トマス・ハーディなどの伝統的な英国詩の影響を受けながらも、現代的な感性を取り入れ、独自の詩風を確立しました。代表作として挙げられるのは、『騙されることの少ない人 (The Less Deceived) 』『高窓 (High Windows)』などです。これらの作品で、彼は英国詩壇における確固たる地位を築きました。

彼は社会的な名声にあまり関心を抱かず、生涯を独身で過ごしました。桂冠[[詩人]]の候補に挙がったこともありましたが、1984年にその座を辞退し、「幻の桂冠[[詩人]]」と呼ばれることになります。政治的には保守党を支持していたと伝えられています。

ラーキンの私生活は、長年謎に包まれていましたが、没後に刊行された『書簡集』によって、そのベールが剥がされました。書簡集からは、陽気で社交的な一面や、複数の愛人との関係などが明らかになり、それまでの彼のイメージは大きく塗り替えられることとなります。この事実は、ある意味で彼の詩作に新たな解釈を与え、さらなる研究を促すことにもなりました。

ラーキンは、自身の作品において、現代社会の様々な側面を鋭く批判的に捉えています。都会の退廃的な雰囲気、人間の孤独や虚無感、社会の矛盾など、現代社会の暗い影を、詩という形で表現しました。しかし同時に、彼の詩には、ユーモアや皮肉といった要素が織り込まれており、読者に考えさせる余地を残しています。

彼の作品は、単なる詩としてだけでなく、当時の英国社会の縮図として捉えることもできます。ラーキンの詩を読むことで、20世紀イギリスの社会や文化、人々の生活様式について理解を深めることができるでしょう。

ラーキンに関する研究書としては、アンドリュー・モーションによる伝記『フィリップ・ラーキン伝』(日本語訳は未刊) が知られています。また、日本では桜井正一郎氏、高野正夫氏らがラーキンの作品や人生について研究し、多数の著書を出版しています。これらの著作は、ラーキンの詩の世界をより深く理解する上で貴重な手がかりとなるでしょう。

彼の作品は、現在も多くの読者から愛され続けています。その詩は、時代を超えて、普遍的なテーマを扱っており、現代社会においても依然として共感を呼ぶものとなっています。ラーキンの詩を通して、私たちは人間の存在や社会のあり方について、改めて考える機会を与えられるのです。

主な作品:

『The North Ship』(1945年)
『The Less Deceived』(1955年)
『The Whitsun Weddings』(1964年)
『High Windows』(1974年)
『Collected Poems』(1988年、2003年)
『Jill』(1946年、小説)
『A Girl in Winter』(1947年、小説)

関連書籍（日本語）

桜井正一郎『イギリスに捧げた歌 フィリップ・ラーキンを読む』(臨川書店)
高野正夫『フィリップ・ラーキンの世界 「言葉よりも」愛を』(国文社)
高野正夫『フィリップ・ラーキン 愛と詩の生涯』(春風社)

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