フィリップ1世 (ブルゴーニュ公)

若きブルゴーニュ公フィリップ1世の生涯

フィリップ1世は、1346年にルーヴル城で誕生し、通称フィリップ・ド・ルーヴルとして知られています。父オーヴェルニュ伯フィリップと母オーヴェルニュ女伯ジャンヌの間に生まれた唯一の男子で、ブルゴーニュ公ウード4世の孫にあたります。父が早世したため、わずか4歳でブルゴーニュ公位を継承しました。

母ジャンヌは1349年にフランス王ジャン2世と再婚し、フィリップの後見人としてブルゴーニュを統治しました。フィリップは、1349年に祖母ジャンヌ3世からブルゴーニュ伯領とアルトワを、1350年に祖父ウード4世からブルゴーニュ公領を、1360年には母ジャンヌからオーヴェルニュとブローニュを相続しました。

さらに、1357年には又従妹にあたるフランドル女伯マルグリット・ド・ダンピエールと結婚し、フランドル、ヌヴェール、ルテル、アントウェルペン、ブラバント公国、リンブルク公国を相続する可能性を手にしました。しかし、1361年、15歳という若さで腺ペストか乗馬事故により急逝しました。逝去10日前に遺言を認めていたものの、病状の深刻さは窺えませんでした。

早世とその後の相続

フィリップ1世の死は、その広大な遺領の相続に大きな波紋を呼びました。各領地は、それぞれの血縁関係に基づいて相続されました。

ブルゴーニュ公国: フィリップの継父でブルゴーニュ公ロベール2世の孫にあたるジャン2世（実際には息子シャルル5世）が相続しました。
ブルゴーニュ伯領とアルトワ: ジャンヌ3世の妹マルグリットが相続しました。
オーヴェルニュ伯領とブローニュ伯領: 母ジャンヌ1世の血筋に由来し、母の大叔父であり、母の再婚相手フランス王ジャン2世の近親でもあるブローニュ伯ジャンが相続しました。

遺領相続問題は、フランス王ジャン2世と親交のあったブローニュ伯ジャンが取り仕切ることになりました。1361年12月28日、ブローニュ伯ジャンはブルゴーニュ公国の廷臣を集めた会議を招集し、「公領は公領として存続する」ことを確認しました。翌1362年1月16日には、フランス王ジャン2世、ブルゴーニュ女伯マルグリット、ブローニュ伯ジャンの三者によりシトーで合意が成立しました。この取り決めは公的文書ではありませんでしたが、後日同日付の証書が交わされました。

相続権を主張する者は他にもおり、ロベール2世の長女マルグリットの孫であったエヴルー伯シャルル（ナバラ王カルロス2世）は、長系相続者としてブルゴーニュ公位を要求しました。しかし、支持を得られず、シャルル5世が差し向けた傭兵隊長ベルトラン・デュ・ゲクランの軍勢に敗れて要求を放棄しました。

1363年1月15日、神聖ローマ皇帝カール4世との間で、フランシュ・コンテをシャルル5世の弟フィリップ（豪胆公）に授封する密約が成立し、同年9月6日、ブルゴーニュ公位は新たにフィリップ豪胆公に与えられました。これにより、ヴァロワ＝ブルゴーニュ家が成立しました。

系譜

フィリップ1世の系譜は、フランス王家と深く関わっています。

フランス王ルイ9世の王女、フィリップ3世の末妹
クレルモン伯ロベールの娘
フランス王フィリップ3世とマリー・ド・ブラバンの子。異母兄にフィリップ4世、ヴァロワ伯シャルル、同母妹にイングランド王エドワード1世の2度目の妃マーガレット

参考文献

ジョゼフ・カルメット著、田辺保訳『ブルゴーニュ大公国』国書刊行会、2000年
ジョゼフ・カルメット著、田辺保訳『ブルゴーニュ大公国』筑摩書房、2023年
Sumption, Jonathan (1999). The Hundred Years War:Trial by Fire. Vol. II. University of Pennsylvania Press
Petit, E. (1905). Histoire des ducs de Bourgogne de la race capétienne. t. IX. Dijon: Imprimerie Darantiere
De Winter, Patrick M. (1983). “Castles and Town Residences of Philip the Bold, Duke of Burgundy (1364-1404)”. Artibus et Historiae 4 (8): 95.
Ormrod, W. Mark (2011). Edward III. Yale University Press

関連項目

ブルゴーニュ公一覧#カペー＝ブルゴーニュ家
ブルゴーニュ公国

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