フィリピン国鉄

フィリピン国有鉄道（PNR）

フィリピン国鉄（Philippine National Railways, PNR）は、フィリピン運輸省が管轄する国有鉄道です。ルソン島を中心に、過去には南北に広がる路線網を持っていましたが、現在は一部区間での運行となっています。

歴史

戦前

1875年、スペイン植民地時代にルソン島での鉄道敷設計画が始まりました。1892年にはマニラとダグパンを結ぶ路線が開業。その後、1916年にマニラ鉄道会社が国有化され、1940年までに南北に路線が拡大し、現在の基盤が築かれました。

戦後

第二次世界大戦で大きな被害を受けたものの、終戦後にはアメリカ軍の管理下で一部路線が復旧。1946年にフィリピン政府に返還され、フィリピン国鉄（PNR）として正式に発足しました。1950年代には蒸気機関車からディーゼル機関車への転換が進められました。

1970年代以降、道路網の発達により、バスやジプニーなどの競争激化、資金不足による整備の遅れ、政治的混乱などにより、経営状況が悪化しました。しかし、日本の政府開発援助により、1989年には南方線の長距離区間、1991年にはマニラ近郊の通勤線が整備されています。

1991年にはピナトゥボ山の噴火により北方線が事実上廃線となりました。1995年にはマニラとカランバを結ぶ通勤路線が開業。2003年には、マニラ近郊の鉄道網を統合する「ストロング・リパブリック・トランジット・システム」計画が承認されました。

しかし、2004年には南方線で夜行列車が脱線事故を起こし、死傷者を出す大惨事となりました。また、2006年には台風により鉄橋が流失し、長距離列車の運行が停止。その後、一部区間で運行が再開されましたが、2012年に再び事故が発生し、現在も運休となっています。

車両

フィリピン国鉄では、日本から譲渡された車両が多く使用されています。12系、14系客車、203系電車などが活躍しましたが、老朽化が進み、近年は新型車両の導入も進められています。2019年にはインドネシア製の気動車、ディーゼル機関車、客車が導入されました。

路線

概要

軌間は1067mmの狭軌。マニラにはトゥトゥバン駅があり、ここから北方線と南方線の2路線が伸びています。現在、公式に運行されているのは総延長の半分程度です。

北方線

トゥトゥバン駅から近郊のカローカン市まで通勤列車が運行されていましたが（現在運休中）、その先は事実上廃線となっています。かつては、マニラ首都圏からブラカン州、パンパンガ州、タルラック州、パンガシナン州、ラウニオン州までを結んでいました。

南方線

マニラ首都圏からラグナ州、ケソン州、南カマリネス州、アルバイ州までを結んでいます。現在は都市間列車であるビコール・エクスプレス（運休中）、通勤列車であるメトロ・コミューターおよびビコール・コミューターが運行されています。

支線

複数の支線が存在しましたが、現在は多くが廃止されています。

運行形態

広域輸送

ビコール・エクスプレスは、マニラとレガスピを結ぶ長距離列車でしたが、現在は運休しています。

地域輸送

メトロ・コミューターはマニラ首都圏とその周辺地域で運行されている通勤列車です。新型車両の導入が進められています。

ビコール・コミューターは南カマリネス州ナガを中心とする地域で運行されている通勤列車です。

諸問題

老朽化

設備、車両の老朽化が深刻です。保守管理も十分ではなく、線路の歪みや枕木の腐食、車両の損傷などが問題となっています。

不法占拠

線路敷地内には不法占拠者が多く、スラムが形成されています。線路への投石や置石などの問題も発生しています。

無賃乗車

貧困層が多い地域を走行するため、無賃乗車も多く見られます。

将来

フィリピン国鉄では、車両や線路の修復作業が進められています。新型車両の導入、老朽化したディーゼル機関車の更新、線路の修復などが課題となっています。

新型車両の導入

インドネシアのINKA社から気動車、ディーゼル機関車、客車が導入されました。また、ハイブリッド・エレクトリック・トレインの導入も計画されています。

ノースレール計画

事実上廃線となっている北方線を再利用し、マニラとクラーク経済特別区を結ぶ計画です。軌間の変更や複線化、高架化などを予定しています。

南北通勤鉄道計画

ラグナ州カランバ駅からマニラのトゥトゥバン駅、ブラカン州マロロス駅を通り、クラークシティまでを結ぶ計画です。空港連絡鉄道としての役割も担います。

参考文献

フィリピン国鉄公式サイト
各種報道記事

関連項目

フィリピンの鉄道
マニラ・ライトレール・トランジット・システム
* マニラ・メトロレール

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