フウセンタケ科

フウセンタケ科

フウセンタケ科（Cortinariaceae）は、真正担子菌綱ハラタケ目に属する菌類の分類群です。世界中に広く分布し、その種数は約2100種に及びます。この科の名前は、多数の種を含む最大の属であるフウセンタケ属（Cortinarius）に由来しています。

近年、分子系統学的研究が進み、以前はフウセンタケ科に分類されていた多くの属が、ヒメノガステル科（Hymenogastraceae）、アセタケ科（Inocybaceae）、オキナタケ科（Bolbitiaceae）などに再編・分割されています。

形態

フウセンタケ科のキノコは、傘の表面の襞（ひだ）に子嚢層を持ち、胞子は茶色で沈殿します。多くの属では、胞子の表面に特徴的な模様や突起（疣：いぼ）が見られます。

生態

フウセンタケ科の多くの種は、樹木の根と共生し、菌根を形成することで生きています。この菌根を通じて、樹木は菌類が作り出す有機酸や抗生物質によって土壌中の栄養分の吸収を促進したり、病原微生物から保護されたりする一方、菌類は樹木が光合成によって得た栄養分の一部を受け取ります。これは相利共生と呼ばれる関係です。

土壌中には、菌根から菌糸を介して、同種の樹木同士や他の植物種へと繋がる広大なネットワークが存在すると考えられています。このネットワークは、森林生態系における栄養分の輸送や情報の伝達において重要な役割を果たしていると考えられています。

人間との関係

フウセンタケ属には、ジンガサドクフウセンタケ（Cortinarius rubellus）やドクフウセンタケ（C. orellanus）など、30種以上がオレラニンと呼ばれる有毒成分を含んでいることが知られています。オレラニンは、除草剤として使用されるジクワットやパラコートと同様の構造を持つ物質であり、摂取すると体内で触媒として繰り返し活性酸素を発生させ、DNAなどを酸化させて損傷させることで、動物や植物に対して毒性を示すと考えられています。

オレラニンによる中毒事例は主に欧米で報告されていますが、有毒種は日本でも高山地帯を中心に分布していることが確認されています。そのため、注意が必要です。

分類

主要な属

フウセンタケ属 (Cortinarius): 疣のある胞子を持ち、さび茶色で沈殿します。コルチナと呼ばれる不完全なつばに覆われ、陸生で菌根を形成します。大きさは様々で、全体が粘液に覆われることが多いです。2022年のゲノム解析により10属に分割・再編されました。
Descomyces
Gigasperma
Mackintoshia
Nanstelocephala
Phaeocollybia
Protoglossum
Pyrrhoglossum
Quadrispora
Stephanopus

かつて含まれていた属

キショウゲンジ属 (Descolea): オキナタケ科へ移動
カワムラジンガサタケ属 (Phaeocollybia): ヒメノガステル科へ移動
ケコガサタケ属 (Galerina)
Amanika
ワカフサタケ属 (Hebeloma)
チャニセムクエタケ属 (Naucoria)
チャツムタケ属 (Gymnopilus): モエギタケ科へ移動
アセタケ属 (Inocybe): アセタケ科へ移動
コガネタケ属 (Phaeolepiota): アセタケ科へ移動

特徴的な属

カワムラジンガサタケ属：疣があり、長い柄を持ちます。胞子は茶色で沈殿します。木の根に生えることが多く、宿主となる木の種が異なれば菌の種も変わります。

参照

フウセンタケ科に関する情報は、以下の資料でさらに詳しく知ることができます。

日本産きのこ図鑑
Index Fungorum
* MycoBank

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