フェイム (曲)

フェイム（Fame）

「フェイム」（Fame）は、イギリスを代表するロック・ミュージシャン、デヴィッド・ボウイが1975年に世に送り出した楽曲です。この楽曲は、ボウイ自身、ギタリストのカルロス・アロマー、そして元ビートルズのジョン・レノンという異色の顔合わせによって共同で生み出されました。1975年に発表されたボウイのスタジオ・アルバム『ヤング・アメリカンズ』に収められた後、特にアメリカ市場でシングルとしても発表され、ボウイのキャリアにおいて重要な位置を占める作品となりました。さらに、1990年には様々なリミックス版を収めたシングル「フェイム90」もリリースされています。

制作背景

この楽曲の制作は、カルロス・アロマーがThe Flaresというグループの楽曲「Foot Stompin'」から着想を得たリフを基盤として始まりました。ボウイとアロマーはこのリフをもとに、楽曲の断片を異なる形に組み直し、独特のグルーヴを持つトラックを作り上げていきます。ボウイは1974年のツアーの一部公演で、原曲である「Foot Stompin'」を披露しており、同年12月4日に出演した「ディック・キャベット・ショー」でのパフォーマンス音源は、後にコンピレーション盤『RarestOneBowie』（1995年）に収められています。

楽曲制作の過程で、ジョン・レノンも参加し、アコースティック・ギターのパートを録音しました。この録音中にレノンが漏らした大きな息遣いを、ボウイが「"fame"（名声）と聞こえる」と感じ取ったことが、歌詞誕生の決定的なきっかけとなったという有名なエピソードが残されています。レノンはバッキング・ボーカルとしても参加しており、楽曲に深みを加えています。

アルバム『ヤング・アメリカンズ』収録曲のうち、この「フェイム」とビートルズのカバー「アクロス・ザ・ユニバース」の2曲は、ボウイ作品で長くプロデューサーを務めたトニー・ヴィスコンティがプロデュースを手がけず、ボウイ自身とハリー・マスリンが共同で務めました。シングルのカップリングには、同じく『ヤング・アメリカンズ』から「ライト」が収められましたが、イタリア盤シングルでは「スペイス・オディティ」がB面に採用されています。

反響と影響

「フェイム」は商業的にも大きな成功を収めました。イギリスのシングルチャートには8週間ランクインし、最高位は17位を記録。一方、アメリカでは『ビルボード』の主要チャートであるBillboard Hot 100で、1975年9月20日と10月4日の2度にわたり自身にとって初めてとなる首位を獲得するという歴史的快挙を達成しました。また、『ビルボード』のダンス・ミュージック／クラブ・プレイ・シングル・チャートでも2位まで上昇するなど、当時のダンスフロアでも人気を博し、1975年10月にはRIAAによってゴールドディスクの認定を受けています。

音楽シーンへの影響も大きく、同時代のファンク/ソウル界の巨匠ジェームス・ブラウンが1975年に発表した楽曲「Hot (I Need to Be Loved, Loved, Loved)」のリズムやリフは、「フェイム」から影響を受けたとされています。また、権威あるロックの殿堂が選定した「ロックンロールを形作った500曲」にボウイの楽曲が4曲選ばれており、本作もその栄誉に浴するなど、後世においてもその音楽的価値が高く評価されています。

参加ミュージシャン

主要な参加メンバーは以下の通りです。

デヴィッド・ボウイ - ボーカル、リズム・ギター、ピアノ、パーカッション
ジョン・レノン - バッキング・ボーカル、アコースティック・ギター
カルロス・アロマー - リード・ギター、リズム・ギター
アール・スリック - リズム・ギター
エミール・カッサン - ベース
デニス・デイヴィス - ドラムス、ヴィブラスラップ
ラルフ・マクドナルド - パーカッション
パブロ・ロザリオ - パーカッション
ジーン・ファインバーグ - バッキング・ボーカル
ジーン・ミリントン - バッキング・ボーカル

フェイム90

1990年には、「フェイム」の様々なリミックス版が「フェイム90」としてシングル発表されました。同年リリースされたボウイのベスト・アルバム『Changesbowie』には、ジョン・ガスがリミックスを手がけたバージョンが収められています。このシングルはBillboard Hot 100へのランクインは叶わなかったものの、『ビルボード』のダンス・ミュージック／クラブ・プレイ・チャートで6位、ラップ・シングル・チャートで12位など、各チャートで上位まで上昇し、改めてその楽曲の持つポテンシャルを示しました。

様々なメディアでの起用

「フェイム」はその知名度から、様々なメディアで起用されています。映画では、『シャンヌのパリ、そしてアメリカ』（1998年）、『ラッシュ/プライドと友情|ラッシュ_プライドと友情』（2013年）といった作品のサウンドトラックに採用されました。音楽ゲームの分野でも、『Guitar Hero 5』（2009年）で採用され、さらには『Rock Band 3』（2010年）のダウンロードコンテンツとしても提供されています。また、「フェイム90」版は、映画『プリティ・ウーマン』（1990年）や『コピーキャット』（1995年）のサウンドトラックにも起用されています。

主なカバーバージョン

多くのアーティストによってカバーされています。

デュラン・デュラン（1981年） - シングル「ケアレス・メモリーズ」B面
ユーリズミックス（2005年） - アルバム『タッチ』リマスター盤ボーナストラック
ザ・フィーリーズ（1986年） - 映画『サムシング・ワイルド』サウンドトラック
宮沢りえ（1990年） - 日本語詞カバー「Game」としてシングル発表、NHK紅白歌合戦出場
インフェクシャス・グルーヴス（1993年） - アルバム『Sarsippius' Ark』
ゴッド・リヴズ・アンダーウォーター（2001年） - 映画『15ミニッツ』サウンドトラック
SPANK HAPPY（2003年） - アルバム『Vendôme,la sick Kaiseki』
DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN（2004年） - アルバム『STAYIN' ALIVE/FAME/PAN-AMERICAN BEEF STAKE ART FEDERATION-2』
野宮真貴（2007年） - トリビュート・アルバム『Tribute to David Bowie』
スコット・ウェイランド（2011年） - 配信限定カバーアルバム『A Compilation Of Scott Weiland Cover Songs』

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