フェデリコ・ツッカリ

フェデリコ・ツッカリは、16世紀後半のマニエリスムを代表するイタリア人画家、建築家です。1542年または1543年頃にウルビーノ公国サンタンジェロ・イン・ヴァードで生まれ、1609年7月20日にアンコーナで亡くなりました。彼は、兄である画家タッデーオ・ツッカリの影響を受け、芸術家としての道を歩み始めました。

生涯

フェデリコは、画家オッタヴィアーノ・デ・ツッカレッリスとアントニア・ネーリの三男として生まれました。1550年、13歳年上の兄タッデーオがローマで成功を収めていたことから、父親の意向でローマへ連れて行かれました。当初、法学を学ばせるつもりでしたが、兄タッデーオはフェデリコの絵画と素描の才能を見抜き、自身の工房で芸術的な訓練を受けさせることにしました。

1565年、フェデリコはフィレンツェのアカデミア・デル・ディゼーニョに登録し、その後、兄が会員であったテッラサンタのサン・ジョヴァンニ組合にも加入しました。初期の仕事としては、兄の助手として、ローマ教皇ピウス4世の小邸宅やパラッツォ・ファルネーゼの装飾に携わっています。その他、初期の作品には、サン・フランチェスコ・デッラ・ヴィーニャ教会グリマーニ家礼拝堂（ヴェネツィア）、トリニタ・デイ・モンティ教会プッチ家礼拝堂（ローマ）、サン・マルチェロ・アル・コルソ教会（ローマ）、オルヴィエート大聖堂（1570年）、オラトリオ・デル・ゴンファローネ（ローマ、1573年）などがあります。

フェデリコは、ミケランジェロが始めたバチカンのパオリーナ礼拝堂装飾を完成させるため、またキアロスクーリの間のフレスコ画装飾を修繕するために、ローマ教皇グレゴリウス13世によってローマに招聘されました。その後、ブリュッセルを訪れ、タペストリー織工のための実物大下絵の連作を制作しました。1574年にはイングランドに渡り、エリザベス1世、メアリー女王、ニコラス・ベーコン卿、フランシス・ウォルシンガム卿、ノッティンガム伯チャールズ・ハワード1世らの肖像画を制作しています。この時期の重要な作品として、ルキアノスの記述に想を得た《誹謗の寓意》が挙げられます。また、《二匹の犬と男》や《天使たちと死せるキリスト》などもこの時期に制作されました。

1585年、フェデリコはスペイン王フェリペ2世から、エル・エスコリアル修道院の装飾の仕事を依頼されました。1586年から1588年末まで現地で働きましたが、ツッカリの絵はフェリペ2世の気に入らず、多くが塗り直されることになりました。しかし、フェリペ2世は「我々は彼ではなく、彼を我々の元に送った人々を非難すべきである」と述べ、平和的な別れとなりました。

1595年、フェデリコはローマ教皇シクストゥス5世の承認を得て、アカデミア・ディ・サン・ルカを設立し、初代校長に就任しました。バルトロメーオ・カルドゥッチが彼の教え子の一人として知られています。

フィレンツェでは、元アンドレア・デル・サルトの家で過ごし、その隣に風変わりな建物を建設しました。その内部は、日常風景を表すルネッタ装飾で飾られ、自画像と家族の姿も描かれています。

また、親戚であるフィオラヴァンティ・ディ・グッファイアの伝手で、ヴァザーリの死により未完となっていたサンタ・マリア・デル・フィオーレ大聖堂のクーポラのフレスコ画を完成させる仕事を得て、助手パッシニャーノと共に完成させました。フェデリコは、ジローラモ・ジェンガの娘フランチェスカ・ジェンガと結婚し、7人の子供をもうけました。

美術評論と理論

同時代人ジョルジョ・ヴァザーリと同様に、ツッカリは美術評論および美術史編纂にも尽力しました。『アカデミア・デル・ディゼーニョの起源と進歩』、『素描・絵画・彫刻・建築の愛好家への書簡』、『画家・彫刻家・建築家のイデア』などの著書を出版し、美術理論の発展に貢献しました。また、ヨーロッパ諸国への旅行記も残しており、当時の美術界の様子を知る上で貴重な資料となっています。

作風と影響

アカデミーを重視し反自然主義的な立場を取ったフェデリコは、カラヴァッジョの絵画を批判しました。彼の作風は、マニエリスムの特徴である優美さと装飾性、そして洗練された技巧に特徴づけられます。彼は、絵画だけでなく、建築、素描、版画など幅広い分野で才能を発揮しました。また、アカデミア・ディ・サン・ルカを設立したことで、後世の芸術家たちの育成にも大きく貢献しました。

晩年

1585年から1588年までスペイン王フェリペ2世の宮廷画家を務めた後、1588年に貴族の称号と高額の年金を得ました。1591年にイタリアに帰還し、死の直前にカヴァリエーレ（騎士）の称号を獲得しました。1609年7月20日、アンコーナで70歳で亡くなりました。

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