フェネチリン

フェネチリンについて

フェネチリン（Fenethylline）は、アンフェタミンとテオフィリンを基にしたコドラッグであり、精神刺激薬として知られています。この薬剤は、カプタゴン（Captagon）やBiocapton、Fittonなどの名称で流通しています。フェネチリンは、1961年にドイツのデグサ社によって初めて合成され、その後約25年間にわたり、軽度のアンフェタミン類の代替薬として利用されてきました。

歴史的背景

フェネチリンは、FDAによる正式な承認は受けていないものの、かつては注意欠陥・多動性障害やナルコレプシー、場合によってはうつ病の治療に用いられることがありました。特に、フェネチリンはアンフェタミンに比べて心血管系への影響が軽いため、心血管疾患を抱える患者にも処方されることがありました。副作用がアンフェタミンよりも少なく、乱用のリスクも低いとされていましたが、1981年にはアメリカの規制物質法に基づきスケジュールI薬物に分類され、1986年には国際的な規制が強化されました。これにより、フェネチリンは多くの国で違法となりました。ただし、乱用事例はそれほど多くはないとされています。

薬理作用

フェネチリンは体内でアンフェタミンとテオフィリンに代謝され、それぞれが精神的な刺激効能を持ちます。フェネチリンの効能は、この二つの物質の相互作用に基づいています。そのため、フェネチリンの服用により促される精神的な興奮や集中力の向上が期待されます。

乱用と違法取引

フェネチリンの主な商品名であるカプタゴンの乱用は、アラブ諸国で特に顕著です。ここでは、偽造薬が横行し、違法ながらも容易に入手できる状況があります。特に、西アジアではこの薬が武装勢力によって使用されているとの報告もあり、安価に製造できるため、5ドルから20ドルで取引されることが一般的です。さらに、武装勢力はこの薬を武器や現金と引き換えに輸出することもあるとされ、経済的な利益をあげています。

2015年にはサウジアラビアの王子を含む人々が、ベイルートで2トンのカプタゴンを押収される事態も発生しました。また、シリア国境近くでの押収事件では1100万錠のカプタゴンが見つかりました。この薬物はシリア内戦において重要な役割を果たしており、2023年パレスチナ・イスラエル戦争時にはハマースの戦闘員によって使用されたことも確認されています。フェネチリンの生産と流通は、武器の資金調達や集団の戦闘意欲を向上させるための重要な要素となっています。

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