フェノスカンジア

フェノスカンジアとは

フェノスカンジア（またはフェノスカンディア）は、スカンジナビア半島、コラ半島、カレリア、そしてフィンランドを含む地域を指す、地理学的および地質学的な用語です。

この用語は、1898年にフィンランドの地質学者ヴィルヘルム・ラムゼイによって初めて提唱されました。彼は、この地域が地質学的に一体のまとまりを持つことを指摘し、その概念を論文で発表しました。

地質学的な特徴

地質学において、フェノスカンジアは、ノルウェー南部（カレドニア造山帯の北西部を除く）、スウェーデン、フィンランド、そしてロシアの一部に広がるバルト楯状地とほぼ一致します。バルト楯状地は約35億年から30億年前に形成された非常に古い地質構造であり、この地域の基盤をなしています。

この地域は最終氷期に厚い氷床に覆われていましたが、氷床が融解した後、その重量がなくなったことによって地盤が隆起し続けています。この現象は「フェノスカンジアの隆起」として知られ、地質学的に重要な研究対象となっています。

地理学的な特徴

1902年、ラムゼイは、フェノスカンジアという概念が単に地質学的なまとまりだけでなく、自然環境的にも一体性を持つ地域を指し示すと提唱しました。そのため、フェノスカンジアは自然科学や地理学の分野でも用いられるようになりました。

この地域は、寒冷な気候、特有の植生、そして氷河によって形成された地形など、共通の自然環境的特徴を持っています。これらの特徴は、フェノスカンジアが単なる地理的な区分ではなく、自然環境的にも一体感のある地域であることを示しています。

フェノスカンジアの構成要素

フェノスカンジアは、以下の地域で構成されています。

スカンジナビア半島: ノルウェー、スウェーデン。
コラ半島: ロシア北西部に位置し、北極圏に接する半島。
カレリア: フィンランドとロシアにまたがる地域。
フィンランド: バルト海に面した北欧の国。

関連する概念

フェノスカンジアの概念に関連する用語には、以下のようなものがあります。

クヴェンランド: フェノスカンジアに隣接する地域であり、歴史的な観点から関連性が指摘されています。
北ヨーロッパ、北欧: フェノスカンジアを含むより広い地域を指す用語です。
安定陸塊: 地殻変動が少ない、安定した大陸の領域。
楯状地: 古い地質構造を持つ安定した陸塊の一部。
バルト楯状地: フェノスカンジアの基盤をなす楯状地。
氷床 (スカンジナビア氷床 = フェノスカンジア氷床): 最終氷期にフェノスカンジアを覆っていた氷床。

まとめ

フェノスカンジアは、地質学的な特徴と自然環境的なまとまりを兼ね備えた、北ヨーロッパにおける重要な地域概念です。バルト楯状地を基盤とし、氷河による地形形成、そして氷床融解後の地盤隆起など、特有の自然現象が見られます。この地域概念は、地質学、地理学、自然科学など、幅広い分野で用いられ、研究されています。

参考文献

浅井辰郎 著「フェノスカンディア」、渡辺光ほか編 編『世界地名大事典 3 ヨーロッパ・ソ連』朝倉書店、1973年5月30日, pp. 1065-1066. ISBN 978-4-254-16553-1.
地学団体研究会新版地学事典編集委員会編 編『新版 地学事典』平凡社、1996年10月. ISBN 978-4-582-11506-2.
山下昇、中村一明「バルト楯状地」 p. 1046.
小林英夫「フェノスカンジア」 p. 1118.
Allaby, Ailsa、Allaby, Michael編 編『オックスフォード地球科学辞典』坂幸恭監訳、朝倉書店、2004年5月. ISBN 978-4-254-16043-7.
Allaby編「フェノスカンジア境界帯」 p. 507.
* Allaby編「フェノスカンジアの隆起」 p. 507.

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