楯状地

楯状地：太古の記憶を刻む大地

楯状地（たてじょうち、英: shield）は、地球の歴史を紐解く鍵となる、広大な安定地塊です。先カンブリア時代、5億7千万年以上前に形成された結晶質の火成岩や変成岩が地表に広く露出しているのが特徴です。中には20億年から35億年前という、地球誕生から間もない頃に形成された岩石も存在します。

これらの岩石は、後世の地殻変動を比較的受けずに済んだため、造山運動や断層運動などの影響が少なく、平坦な地形を呈していることが多いです。ただし、全体としてはなだらかな凸面をしており、まるで伏せた盾のような形状をしていることから、「楯状地」と名付けられました。周辺部には、浸食された堆積物で覆われたプラットフォーム（かつては「卓状地」と呼ばれていました）が広がっています。

楯状地を構成する岩石は、主にトーナライト組成の花崗岩や花崗閃緑岩起源の片麻岩で、火山性堆積物や緑色岩から成る帯状の堆積岩に囲まれています。これらの岩石は、緑色片岩、角閃岩、グラニュライトといった様々な変成相を示し、それぞれ異なる地質学的歴史を物語っています。

地質学的には安定した楯状地は、長い時間をかけて浸食が進んだ結果、準平原と呼ばれる平坦な地形となっています。しかし、その平坦さゆえに、その下にある太古の岩石の広がりを理解することが容易ではない面もあります。楯状地は通常、大陸の中核を形成しており、カンブリア紀以降に形成された褶曲した岩石に縁取られています。

「Shield」という英単語は、1901年にエドアルト・ジュースが著した『Das Antlitz der Erde』（地球の顔）で用いられたドイツ語の「schild」を、H.B.C.ソラスが英語に翻訳したものです。

楯状地は、大陸地殻を構成するクラトンの一部です。クラトンとは、大陸地殻の安定した古い部分を指す用語であり、楯状地はその中でも地表に古期岩盤が広く露出している部分を指します。楯状地の外側には、活発な構造運動やプレート運動を示す地域があり、そこでは数億年にわたる複雑な造山運動の歴史が刻まれています。

主な大陸楯状地

世界には様々な楯状地が存在します。代表的なものとしては以下の地域が挙げられます。

カナダ楯状地：北アメリカ[[大陸]]北部、北極圏に広がる広大な地塊
ブラジル楯状地（アマゾン楯状地）：南アメリカ[[大陸]]東部に位置し、北はギアナ高地（ギアナ楯状地）と接する
ギアナ楯状地：南アメリカ[[大陸]]北部
バルト楯状地：ノルウェー東部、フィンランド、スウェーデン
ウクライナ楯状地：ウクライナ中部
アフリカ楯状地：アフリカ大陸に広がる広大な地塊
オーストラリア楯状地：オーストラリア西部
アラビア楯状地：アラビア半島西部
南極楯状地：南極[[大陸]]
中国・朝鮮楯状地（シナ地塊）：中国と北朝鮮の一部
* アンガラ楯状地：シベリア地域（エニセイ川、レナ川、北極海、バイカル湖に囲まれた地域）

「楯状地」と「盾状地」

「楯状地」と「盾状地」のどちらが適切な表記かについては議論があります。漢字の本来の意味や、地形の形状をより適切に表現する漢字であるかどうかを議論されています。しかし、一般的には「楯状地」の表記が広く用いられています。

楯状地は、地球の壮大な歴史とダイナミックな地質活動を理解する上で非常に重要な役割を果たしています。これからも、研究が進み、より多くのことが明らかになっていくでしょう。

もう一度検索