フェライト磁石

フェライト磁石：種類、特性、用途、製造工程

フェライト磁石は、酸化鉄を主成分とし、バリウムやストロンチウムなどの金属元素を添加して作られる磁性材料です。その磁気特性から、ハードフェライトとソフトフェライトの2種類に大別されます。

ハードフェライト：強力な永久磁石

ハードフェライトは、高い保磁力を持つ永久磁石として知られ、セラミック磁石とも呼ばれます。その強力な磁力は、モーター、スピーカー、磁気テープ、ピップエレキバン（一部製品）など、幅広い用途で活用されています。

ハードフェライトは、製造工程において磁界を印加するか否かで「等方性フェライト」と「異方性フェライト」に分類されます。異方性フェライトは、磁界中で成形することで磁化しやすい方向を揃え、より強力な磁石となります。

主な特性は以下の通りです。

高い保磁力: 一度磁化されると、磁力が弱まりにくい
低温での減磁: 低温環境下では磁力が低下しやすい
高い電気抵抗: 渦電流損失が少なく、高周波用途にも適している
硬度が高い: 割れやすいという欠点もある
耐薬品性・耐食性: 磁器であるため、薬品や錆に強い
成形性: 焼成前は粉末状なので、自由な形状に成形できる
* キュリー点: 約460℃

ソフトフェライト：外部磁界に依存する磁石

ソフトフェライトは、外部磁界が加わると磁化しますが、磁界がなくなると磁力を失います。この特性を生かし、コイル、変圧器、磁気ヘッドなどの電子部品の磁心や、コピートナーなどに使用されています。

フェライト磁石の製造工程

ハードフェライトの製造工程は、大きく分けて以下のステップから成ります。

1. 原料準備: 酸化鉄、炭酸バリウムまたは炭酸ストロンチウムを準備します。酸化鉄は、鉄の圧延工程における洗浄液から回収されることもあります。
2. 粉砕・混合: 原料をボールミルで粉砕・混合します。
3. 仮焼: 約1300℃で10時間ほど焼成します。
4. 粉砕: 仮焼後の材料を再び粉砕します。
5. 混合: 粘結剤や潤滑剤を混ぜて混合します。
6. 成形: プレス機を用いて目的の形状に成形します。等方性フェライトは通常のプレス、異方性フェライトは磁界中でプレスします。
7. 焼成: 約1000℃で25～26時間焼成します。
8. 仕上げ加工: 必要に応じて切削加工などの仕上げを行います。
9. 着磁: パルス状の強い磁界で着磁します。

フェライト磁石の歴史

フェライト磁石は、1930年に加藤与五郎と武井武によって発明され、1937年に東京電気化学工業によって工業化されました。その後、SrLaCoフェライトやCaLaCoフェライトなどの開発により、磁気特性の更なる向上も実現しています。近年では、EVモーターへの活用も盛んに研究されています。

まとめ

フェライト磁石は、安価で優れた磁気特性を持つため、様々な分野で広く利用されています。ハードフェライトとソフトフェライトの特性を理解し、用途に適した材料を選択することが重要です。

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