ストロンチウム

ストロンチウムの概要

ストロンチウム（元素記号: Sr、原子番号: 38）は、軟らかく銀白色のアルカリ土類金属の一種です。この元素は水素と同様に高い反応性を持ち、特に空気中に置かれると表面が黄味を帯びることが特徴です。自然界では、ストロンチウムは天青石やストロンチアン石などの鉱物に存在しています。

歴史と名称

ストロンチウムという名前は、1787年に発見されたストロンチアン石が産出されるスコットランドの村「ストロンチアン」に由来しています。1790年には、Adair CrawfordとWilliam Cruickshankがストロンチアン石の特性に気づき、その後の研究が進められていきました。1808年、ハンフリー・デービー卿によってストロンチウムが分離され、元素名が正式に決定されました。

性質

ストロンチウムは、結晶構造によって常温から高温までの異なる形を取ります。常温では面心立方格子構造（FCC）を持ち、一定の温度範囲では六方最密充填構造（HCP）や体心立方格子（BCC）を示します。銀白色の金属であり、比重は2.63、融点は777°C、沸点は1382°Cです。この金属は炎色反応によって赤色の炎を発生させるため、花火や発炎筒に利用されています。また、空気中では酸化物の被膜が形成されるため、酸化ストロンチウムと水酸化ストロンチウムが生成されます。

用途

ストロンチウムは工業的に様々な用途があります。塩化ストロンチウムなどが赤い炎を発生させるため花火や信号用具に利用され、高温超伝導体の材料にも使われます。また炭酸ストロンチウムは、ブラウン管の陰極線管のガラスに添加される他、磁性材料の原料としても使用されます。ストロンチウム単体は、高反応性のため、真空装置中でのガスを吸着するゲッターとしての役割も果たします。

同位体

ストロンチウムの同位体には、特にストロンチウム90（90Sr）が注目されています。この放射性同位体は、半減期が約28.8年でベータ崩壊を経てイットリウム90に変化します。ストロンチウム90は、体内に取り込まれるとカルシウムと類似の挙動を示し、骨に蓄積されます。そのため、放射線エネルギー源としても利用されています。ストロンチウム89は骨腫瘍の治療に使われることがあります。

生体への影響

ストロンチウム90は、骨に蓄積することで生物学的半減期が長くなります。この特性から、人体に対する危険が増すため、その取り扱いには注意が必要です。特に、過去の核実験によって放出された放射性ストロンチウムの影響が懸念されています。さらに、放射性物質の除去方法や排泄促進が研究されています。国際原子力機関（IAEA）は、放射性ストロンチウムの大量摂取後にアルギン酸の投与を推奨しています。

産出

ストロンチウムは主に、天青石（SrSO4）の形で自然界に存在しています。2015年のデータによると、中国、スペイン、メキシコが主要な生産国であり、炭酸塩に変換され遂行されることが多いです。ストロンチウムの金属は、酸化ストロンチウムをアルミニウムで還元することにより商業的に生産されています。

結論

ストロンチウムは、多様な特性と用途を持つ重要な化学元素です。放射性同位体の特性や生体への影響についても多くの研究が行われており、今後もその利用や取り扱いが重要なテーマであるでしょう。

もう一度検索