フェラーリ・F2002

フェラーリF2002/F2002B：F1黄金期の象徴

2002年のF1世界選手権を席巻したフェラーリF2002は、スクーデリア・フェラーリによる革新的なマシンでした。前年、楽勝でチャンピオンを獲得したフェラーリは、その優位性をさらに強化すべく、F2002の開発に挑みました。

F2002：進化した空力性能と軽量化

F2001から進化したF2002は、まずフロントノーズのデザインが変更されました。急激に下がる形状から、より緩やかな傾斜に変更することで空力性能を向上させています。さらに、マクラーレンが採用したチムニーダクトを改良し、エギゾーストパイプと一体化することで、サイドポンツーン上の空気の流れを最適化しました。

また、F2002ではギヤボックスの構造も大幅に変更されています。従来の複雑なチタン製ハウジングとカーボンファイバー製サスペンションハウジングの組み合わせを、よりシンプルで軽量なチタン製ギヤボックスに置き換えました。この軽量化は、リヤタイヤ周りの空力性能の向上にも大きく貢献しました。この技術は、ミナルディが2000年のM02で既に採用していたものです。

2002年シーズン：圧倒的な強さ

2002年シーズンは、フェラーリの独壇場となりました。開幕3戦は前年モデルの改良版F2001Bを使用する予定でしたが、予定を前倒しし、第3戦ブラジルGPからミハエル・シューマッハがF2002で参戦を開始しました。

シューマッハはシーズン全戦完走、全戦表彰台という驚異的な安定性を示し、年間11勝を達成。これはナイジェル・マンセルの記録を更新する偉業でした。第11戦フランスGPでは早くもドライバーズタイトル3連覇を決めています。その後も5戦連続のワンツーフィニッシュを達成し、17戦中15勝という圧倒的な強さでシーズンを終えました。

しかし、その圧倒的な強さゆえに物議を醸す場面もありました。第6戦オーストリアGPと第16戦アメリカGPでは、レース終盤に1位と2位の順位が入れ替わる場面があり、フェラーリの行為が議論を呼びました。

F2002のスペック

シャーシ名：F2002 (653)
シャーシ構造：カーボンファイバー/ハニカムコンポジット複合構造モノコック
全長：4,495mm
全幅：1,796mm
全高：959mm
ホイールベース：3,113mm
エンジン：Tipo051 (V型10気筒、90度、2,996.6cc)
ギヤボックス：7速＋リバース1速セミオートマチック/チタン製ケーシング
重量：冷却水、潤滑油、ドライバーを含めて605kg（決勝は600kg）

2002年シーズンの結果

コンストラクターズチャンピオン獲得
ドライバーズチャンピオン：ミハエル・シューマッハ (11勝)
ドライバーズランキング2位：ルーベンス・バリチェロ (4勝)

F2002B：F2003-GAの繋ぎ役

2003年シーズンに向けて開発されたF2003-GAは、カーボン製リヤサスペンションの不具合により投入が遅れました。そのため、F2002の改良版であるF2002Bが開幕戦から第4戦サンマリノグランプリまで使用されました。F2002Bは、エアロダイナミクス面での変更は限定的でしたが、最新型のECUとF2003-GA用のエンジンTipo052を搭載していました。

F2002Bは、開幕戦オーストラリアGP予選でフロントローを独占するなど速さを見せつけましたが、決勝ではシューマッハがコースオフ、バリチェロがHANS装着の影響でリタイアするなど、苦戦を強いられました。その後も、機械的なトラブルやアクシデントに見舞われ、F2003-GAの投入が待ち望まれるシーズン序盤となりました。しかし、サンマリノグランプリではシューマッハが優勝、バリチェロが3位表彰台を獲得し、F2002Bのシーズンを締めくくりました。

F2002Bのスペック

F2002とほぼ同様のスペックでしたが、エンジンがTipo052に変更されています。

2003年シーズンの結果 (F2002B使用期間)

ドライバーズランキング1位：ミハエル・シューマッハ
ドライバーズランキング4位：ルーベンス・バリチェロ

F2002/F2002Bは、フェラーリの黄金期を象徴するマシンとして、F1の歴史に名を刻んでいます。その圧倒的な速さと信頼性、そして開発陣の技術力の高さが、このマシンを伝説的な存在たらしめているのです。

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