フェリシアン化カリウム

フェリシアン化カリウムとは

フェリシアン化カリウム（potassium ferricyanide）は、無機化合物に分類される錯塩の一種です。この化合物は赤色の結晶または粉末で、組成式は K3[Fe(CN)6] で表されます。水に非常に溶けやすく、その水溶液は薄い黄緑色の蛍光を発します。この物質は、フェロシアン化カリウムの溶液に塩素ガスを通じることによって生成されることがあります。

性質

フェリシアン化カリウムの主成分であるFe(CN)6]3−（フェリシアン化物イオン）は、水溶液中で非常に安定しており、無機シアン化物のような毒性はありません。これは、配位子のシアン化物イオンが解離しにくいためです（解離定数 K は 10−44）。ただし、光（特に紫外線）の影響を受けることで一部の配位子が解離し、微量のシアン化物イオンが生成されることがあります。この現象は、[[鉄]イオンが光によって[鉄]イオンに還元されるために起こります。それに対して、フェロシアン化物においては光解離が発生しません。なお、この微量のシアン化物イオンが脊椎動物に対しては問題とならないものの、動物プランクトンなどの水生生物においては毒性を持つ可能性があります。例えば、オオミジンコの48時間EC50は0.029mg/Lとされています。

また、アルカリ性条件下では、フェリシアン化カリウムと過酸化水素、さらにはルミノールといった化合物が共存すると発光現象が確認されています。

利用

写真技法

この化合物の光に対する感受性は、写真作成において利用されています。具体的には、フェリシアン化カリウムを使って金属銀を酸化させることができ、臭化カリウムなどのハロゲン化イオンを含むフェリシアン化カリウムの水溶液に現像済みの白黒フィルムや印画紙を浸すことで、銀像の濃度を薄くすることが可能です。酸化された銀はゼラチン中に析出し、フェリシアン化カリウムはこのプロセスで「再ハロゲン化」タイプの減力剤や漂白剤として頻繁に利用されてきました。さらに、チオ硫酸ナトリウムとの混合物は「ファーマーの減力液」として知られ、プリントやネガの濃度を調整する際にも役立っています。これにより、脱銀の過程が進むのですが、再定着処理が必要となるため、慎重に使用する必要があります。

青写真

この化合物は青写真の現像液としても利用されており、青地に白線の陰画を作成する際に役立っています。

試薬として

無機化学では、フェリシアン化カリウムは鉄イオンの検出にも使われます。2価の鉄イオンと反応すると濃青色の沈殿が生成し、3価の鉄イオンの場合は溶液が褐色に変わります。さらに、有機化学においては穏やかな酸化剤としても使用され、生理学の実験では酸化還元電位を上げるためにしばしば利用されています。

工業利用

また、この化合物は鉄や鋼の熱処理、メッキ、ウールの染色といった工業用途にも広く採用されています。

関連事項

フェリシアン化カリウムは産業界や科学分野において多様な役割を果たしており、環境への影響についての考察も重要なテーマとなっています。

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