フェルナンド・ポー・ジュニア

フィリピン映画界の伝説：フェルナンド・ポー・ジュニア

フェルナンド・ポー・ジュニア（Fernando Poe Jr.）は、本名をロナルド・アラン・ケリー・ポー（Ronald Allan Kelley Poe）といい、1939年8月20日に生まれ、2004年12月14日に亡くなったフィリピンを代表する俳優です。彼のイニシャルからFPJ、あるいは親しみを込めて「Da King」とも呼ばれ、フィリピン映画界における比類なき存在として「フィリピン映画界の王」と称されています。

彼の生家は芸術と深く結びついていました。父は俳優のフェルナンド・ポー・シニア、母はフィリピン系アメリカ人のエリザベス・ケリーです。祖父ロレンソ・ポーはスペインのカタルーニャ地方マヨルカ島出身の劇作家であり、フィリピンへ移住して鉱業などに携わっていました。ポーという姓の本来の綴りはPouであったとされています。ロナルド・アラン・ケリー・ポーは6人兄弟姉妹の2番目としてマニラで生まれ、弟のアンディ・ポーも後に俳優となりました。当初、アンディがフェルナンド・ポー・ジュニアと名乗っていましたが、後にロナルドがこの名を継承しました。父には女優との間に生まれた非嫡出子の息子（コンラッド・ポー）もいます。

キャリアの軌跡

ポー・ジュニアはサン・ベダ・カレッジで初等教育、サン・セバスティアン・カレッジで中等教育を修め、その後マプア工業学院とザ・イースト大学で演劇を学びましたが、1951年に父が狂犬病で急逝したため、家計を支えるために大学を中退せざるを得ませんでした。祖父もまた、1954年に亡くなっています。

映画業界でのキャリアは、メッセンジャーとして始まりました。やがて俳優を志し、エバーラスティング・ピクチャーズでスタントマンとして『Anak ni Palaris』に出演。1957年の『Lo Waist Gang』で大きな注目を集め、スター俳優への道を駆け上がりました。

彼の演じる役柄は、貧困にあえぎ、不正に虐げられた人々を助けるヒーローが中心でした。この一貫した役柄を通じて、彼は多くの国民、特に弱き人々の代弁者となり、絶大な人気と支持を獲得しました。彼は俳優としてだけでなく、ロンワルド・レジェス（Ronwaldo Reyes）という偽名で映画監督も務めました。この偽名は、父方の祖母マルタの姓に由来しています。監督作の一つである『Mga anghel na walang langit』はFAMAS賞の物語賞を受賞しましたが、レジェスが誰であるかは授賞式まで伏せられていました。

1961年には自身の制作会社FPJプロダクションを設立し、他の映画会社も立ち上げました。また、1963年にはフィリピン映画界から不当に利益を得ていたとされる組織「ビッグ・フォー」に対して証言するなど、業界の健全化にも貢献しました。

俳優としての受賞歴も華々しく、FAMAS賞では『Mga Alabok sa Lupa』（1968年）、『Asedillo』（1972年）、『Durugin si Totoy Bato』（1980年）、『Umpisahan mo...Tatapusin ko』（1984年）、『Muslim .357』（1987年）で計5回、男優賞に輝き、これは他の著名俳優と並ぶ最多タイ記録です。

私生活と政治への挑戦

私生活では、1968年に女優のスーザン・ロセスと結婚しました。二人の間には血縁の子はいませんでしたが、グレース・ポーを養女として迎えました。グレースは後に政界へ進出しました。ポー・ジュニアは妻スーザン以外の女性との間にも子がおり、女優アナ・マリンとの間に息子、女優ロウェナ・モランとの間に娘ロビ・ポーをもうけています。これらの非嫡出子を彼が公に認知したのは、2004年の大統領選挙期間中でした。

2004年、長年の友人であるジョセフ・エストラーダ元大統領（彼も俳優から政治家へ転身した人物です）の影響もあり、ポー・ジュニアは国民連合（KNP）からフィリピン大統領選挙への出馬を決意しました。庶民からの圧倒的な人気を背景に選挙戦を進めましたが、5月10日の投票の結果、現職のグロリア・マカパガル・アロヨ大統領にわずかな票差で敗れ、当選は叶いませんでした。この選挙期間中には、彼の出自、特に両親が彼が生まれる前に正式に結婚していなかったことを巡り、「フィリピン国民でない女性の息子であり、大統領の資格がない」とするネガティブキャンペーンも展開されました。

晩年と遺産

2004年12月11日、自身の制作スタジオでのクリスマスパーティー中に体調不良を訴え、病院に搬送されました。診断は脳卒中であり、多臓器不全を伴う脳血栓と説明されました。意識を回復することなく、大統領選挙からわずか半年後の12月14日、65歳でこの世を去りました。

彼の死は多くの国民に悲しみをもって迎えられました。主催者発表によれば、9日間にわたって行われた通夜には200万人もの人々が参列したとされています。両親と同じく、マニラ北墓地にあるポー家の墓地に埋葬されました。彼の功績を称え、死去から8年後の2012年12月14日には、マニラ市内のロハス通りとアルキサ通りの交差点に記念碑が建立され、妻スーザンや娘グレースが式典に出席しました。

没後も彼の存在は忘れられることはありませんでした。死去から2年後の2006年5月23日、グロリア・アロヨ大統領によって映画分野におけるフィリピン国民芸術家（National Artist of the Philippines）に選出されるという最高栄誉が贈られました。この選出は、2012年7月20日に当時のベニグノ・アキノ3世大統領によって正式に承認され、同年8月16日にポー・ジュニアの家族に授与されました。映画俳優として、そして庶民のヒーローとしてフィリピン国民に深く愛されたフェルナンド・ポー・ジュニアは、「Da King」としてフィリピンの歴史と文化にその名を永遠に刻んでいます。

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