フェロシリコン

フェロシリコン：その製造、用途、そして水素製造への貢献

フェロシリコンは、ケイ素を15～90%含む鉄合金の一種です。鉄とケイ素の合金であり、ケイ化鉄を主成分としています。その用途は多岐にわたり、特に製鋼分野や水素製造において重要な役割を担っています。

フェロシリコンの製造

フェロシリコンは、鉄鉱石とシリカ（二酸化ケイ素）、または砂をコークスを用いて還元することで製造されます。ケイ素の含有率によって製造方法が異なり、ケイ素含有率が15%以下のフェロシリコンは高炉を用いて製造されますが、それ以上の含有率のフェロシリコンは電気炉を用いて製造されます。近年、国内では生産コストの上昇によりフェロシリコンの製造は減少傾向にあります。

フェロシリコンの用途

フェロシリコンの最も重要な用途は、製鋼における脱酸剤としての利用です。ケイ素の高い還元性を活かし、溶鋼中の酸素を除去することで、鋼材の品質向上に貢献します。また、テルミット溶接の添加剤としても使用され、溶接反応を促進する役割を果たします。さらに、ケイ素鋼の原料としても利用されています。

フェロシリコンを用いた水素製造

フェロシリコンは、水素製造においても重要な役割を果たしています。特に第一次世界大戦後から、気球用の水素製造に広く用いられるようになりました。それ以前は、高温の鉄の上を水蒸気が通過することで水素を発生させる方法が用いられていましたが、生成される水素の純度や製造プロセスの制御が困難でした。

フェロシリコンを用いた水素製造は、水酸化ナトリウム（NaOH）、フェロシリコン、水（H2O）を用いた化学反応を利用します。この反応は、密閉された重鋼製の圧力容器の中で行われます。水酸化ナトリウムとフェロシリコンを圧力容器に入れ、制御された量の水を加えることで反応が始まり、ケイ酸ナトリウム、水素、水蒸気が生成されます。反応は発熱反応であり、水酸化ナトリウムが溶解することで約93℃まで温度が上昇します。

化学反応式は以下の通りです。

2NaOH + Si + H₂O → 2Na₂SiO₃ + 2H₂

フェロシリコンを用いた水素製造法は、現場で容易に水素を製造できるため、気球などへの水素供給において大きな利点がありました。この方法は、水素の純度や製造プロセスを容易に制御できるため、安全で効率的な水素供給を可能にしました。

まとめ

フェロシリコンは、その高いケイ素含有率と還元性を活かし、製鋼、溶接、そして水素製造など、多様な分野で重要な役割を果たしています。特に水素製造においては、第一次世界大戦後から気球への水素供給源として貢献しており、現代でもその有用性は高く評価されています。しかし、国内生産コストの上昇が課題となっており、今後の生産体制の維持・改善が求められています。

もう一度検索