フェロー諸島の旗

フェロー諸島の旗「Merkið」の物語

フェロー諸島の旗「Merkið」（旗、印の意）は、白地に青と赤のスカンディナヴィア十字が描かれた独自の旗です。そのデザインは、かつての宗主国ノルウェーや、フェロー諸島からの移民が多いアイスランドの国旗と共通点が見られますが、いずれもデンマークの国旗「ダネブロウ」をルーツとしています。

誕生の背景：ナショナリズムの高揚

「羊の島」と呼ばれるフェロー諸島では、19世紀後半にナショナリズムが高揚し、羊がシンボルとして用いられるようになりました。1888年のクリスマスには、フェロー語と伝統の保護を求める集会が開かれ、フェロー国民運動が活発化。青地に太い赤枠で白い羊をあしらった旗が非公式に使用されました。その後、羊の代わりにフェロー諸島の鳥であるミヤコドリが用いられることもありました。

1915年にアイスランドがスカンディナヴィア十字に基づく独自の旗を制定したことは、当時デンマーク領だったフェロー諸島に大きな影響を与えました。

現代の旗の誕生

現在の旗は1919年、コペンハーゲンで学んでいた Jens Oliver Lisberg とその友人たちによって考案され、Ninna Jacobsen によって縫製されました。同年6月22日、Lisberg の故郷であるスヴロイ島のFámjin村での結婚式で初めて掲げられました。

1930年には、フェロー諸島議会の開会式でデンマーク国旗が降ろされ、「Merkið」が掲げられるという事件が起こりました。翌年には、「Merkið」はフェロー各地で広く使用されるようになりますが、その地位はあくまで非公式なものでした。

第二次世界大戦と国旗の承認

1940年、デンマークがドイツ軍に占領されると、イギリス軍がフェロー諸島を占領。同年4月25日、イギリス軍占領政府は、フェロー諸島の船舶をドイツ占領下のデンマーク船舶と区別するため、「Merkið」を商船旗として承認しました。陸上ではデンマーク国旗が公式に使用され続けましたが、「Merkið」が海上での使用を認められた4月25日は、現在も「国旗の日」として祝われています。

自治権獲得と正式な国旗として承認

終戦後、自治を経験した島民はデンマークへの復帰を拒否し、独立を求めました。住民投票の結果、フェロー諸島はデンマーク領に留まることになったものの、自治権を獲得。1948年5月23日、デンマーク政府は自治法に基づき、「Merkið」をフェロー諸島政府の旗として正式に承認しました。現在、北欧理事会では、他の北欧諸国・地域の旗とともに「Merkið」が掲げられています。最初に作られた「Merkið」は、現在も Fámjin 村の教会に展示されています。

デザインの特徴

「Merkið」のデザインは、赤色と青色を隣り合わせに配置している点で、伝統的な旗章学および紋章学のルールからは逸脱しています。

関連情報：

国旗の一覧
アイスランドの国旗
スカンディナヴィア十字
フェロー諸島の紋章

外部リンク：

* Faroe Islands at Flags of the World

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