ミヤコドリ

ミヤコドリ：文学作品にも登場する鳥

ミヤコドリ（学名: Haematopus ostralegus）は、チドリ目ミヤコドリ科に属する鳥類です。日本では古くから知られており、『万葉集』や『伊勢物語』といった古典文学作品にも登場することから、馴染み深い鳥と言えるでしょう。しかし、これらの古典作品に登場する「都鳥」が、現在のミヤコドリを指すのか、それとも他の鳥類を指すのかについては、長年にわたって議論が続けられてきました。

古典文学における「都鳥」

「[都鳥]]」という名は、『万葉集』に初出します。しかし、『伊勢物語』においては、その記述からカモメ科のユリカモメ]であるとする説が有力です。中世には、[[ユリカモメとミヤコドリの両方を「都鳥」と呼んでいた時期もあり、名称の混同が問題となりました。

江戸時代には、隅田川と結びついた「都鳥」への関心が高まり、文芸や絵画、音楽の題材として盛んに用いられました。本草家の北野鞠塢は『都鳥考』（1815年）において、古典作品に登場する「都鳥」はカモメ類ではなくミヤコドリであると結論づけましたが、その考証には疑問も呈されています。明治時代には鳥類和名の統一が図られ、ミヤコドリという和名が定着しました。しかし、1944年には熊谷三郎が『都鳥新考』を著し、古典文学作品に登場する「都鳥」はユリカモメであると反論しています。

『万葉集』の「都鳥」に関しては、ミヤコドリの可能性も残されていますが、決定的な証拠はありません。

ミヤコドリの形態と生態

ミヤコドリは体長約45cmで、ハトよりもやや大きいです。くちばしと足は長く赤く、上面は黒く、胸から腹、翼にかけて白い部分があります。

北欧、中央アジア、沿海州、カムチャツカ半島などで繁殖し、西欧、アフリカ西岸、中東、中国南部、日本などの海岸で越冬します。かつて日本では主に九州に渡来していましたが、近年は東京湾でも観察されるようになっています。アイルランドの国鳥にも指定されています。

海岸で小規模な群れを作って生活し、英名の ‘Oystercatcher’（カキを捕まえるもの）が示す通り、カキなどの二枚貝を主な餌としています。平たく鋭いくちばしで貝柱を切断し、殻を開けて中身を食べるほか、カニやゴカイなども食べます。

ミヤコドリの亜種

ミヤコドリには以下の3亜種が知られています。

H. o. ostralegus：アイスランド、スカンディナヴィア半島からヨーロッパ南部。冬期はアフリカへ渡る。
H. o. longipes：ロシア・シベリアからカスピ海、アラル海周辺。
H. o. osculans*：カムチャツカ半島、北朝鮮。冬期は中国東部へ渡る。

まとめ

ミヤコドリは、その美しい姿と、古来より日本文化と深く関わってきた歴史を持つ鳥です。名称をめぐる議論は、古典文学の解釈や鳥類学の進歩を反映しており、今後も研究が続けられていくでしょう。近年は生息域の拡大も確認されており、今後もその生態や分布の変化に注目が集まります。 貝類にも同名の種が存在することにも留意すべきです。

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