フェードル

フェードル

『フェードル（Phèdre）』は、フランスの劇作家ジャン・ラシーヌが1677年に初演した悲劇です。この作品は、古代ギリシャの神話を題材にしたものであり、ラシーヌの最後の世俗的な悲劇作品でもあります。『フェードル』は全5幕から構成されており、様々な動機や感情が交錯する中で展開される物語が特徴です。

作品の概要

ラシーヌの『フェードル』は、ギリシャ神話に登場するキャラクターたちの悲劇的な運命を描いています。物語の中心となるのはテゼーの妻フェードルであり、彼女が義理の息子であるイポリートに恋を抱くことで物語は始まります。フェードルは、夫が不在の間に生じたこの禁断の情熱によって苦悩し、自己の運命と向き合いながら、様々な選択を迫られます。

この劇には深い人間観察と構成の巧妙さがあり、役柄の描写が非常に優れています。特に、フェードルのキャラクターは衝動の犠牲者であり、彼女自身の感情によって周囲に多大な影響を及ぼします。ラシーヌは劇の最後でフェードルを死に至らしめ、悲劇的な結末を用意します。

登場人物

• - テゼー: アテナイの王。
• - フェードル: テゼーの妻。ミノスとパジフィエの娘。
• - イポリート: テゼーの子。母親はアマゾーンの女王。
• - アリシー: アテナイの王族の娘。
• - エノーヌ: フェードルの乳母であり、彼女の相談役。
• - テラメーヌ: イポリートの養育係。
• - イスメーヌ: アリシーの相談役。
• - パノープ: フェードルの侍女。

あらすじ

第1幕

物語は、テゼーが行方不明になって6ヶ月が経った宮廷から始まります。イポリートは父を探しに出る決意をしますが、実際には彼の心にはアリシーへの恋が秘められていました。一方、フェードルは謎の病に冒され、乳母エノーヌに自らの愛の告白をしてしまいます。テゼーの死の報せが届くと、フェードルはイポリートとの愛を再び希望に抱くようになります。

第2幕

アリシーもイポリートに思いを寄せていることが明らかになりますが、イポリートは継母に対する感情にどうにか対処しようと苦心します。フェードルの告白に驚いたイポリートが拒絶的な態度を取ると、フェードルは絶望し、エノーヌが思いついた致命的な策略によってさらに険悪な状況へと転がります。

第3幕

フェードルは運命に対抗することを決意しますが、エノーヌの提案によって一線を越えることになります。名誉を守ろうとするイポリートは父を避け、フェードルの思惑に翻弄されます。

第4幕

テゼーは、誤った決断のもとにイポリートを追放する命令を発します。一方、フェードルは自らの行為による良心の呵責に苛まれ、混乱の中で嫉妬心を抱くようになります。

第5幕

真実を隠して旅立つイポリートは、友に別れを告げ、悲劇的な運命を迎います。フェードルは、周囲の影響を受けて遂に自らの運命を選ぶことを決意し、罪を認めた後に滅びを選びます。

作品の影響

『フェードル』は、ラシーヌの代表作として広く受け入れられ、後世の作品に多大な影響を与えました。オペラや文学作品においても、そのテーマや人物造形が継承されています。特に、バロック音楽の作曲家ジャン＝フィリップ・ラモーや、19世紀の作家エミール・ゾラに影響を与えました。この悲劇はフランス文学における重要な位置を占め、今なお多くの人々に感銘を与えています。

もう一度検索