フォクトレンダーのスプリングカメラ製品一覧

フォクトレンダー スプリングカメラ製品一覧

フォクトレンダーは、写真フィルムの黎明期から多様なカメラを開発してきたメーカーです。その中でも、スプリングの力でレンズとシャッターが繰り出す機構を持つスプリングカメラは、コンパクトさと機能性を両立した製品として知られています。以下にフォクトレンダーが製造したスプリングカメラの代表的なモデルを、使用フィルムごとに分類して解説します。

116フィルム使用カメラ

ロールフィルムカメラ：6.5×11cm判のロールフィルムを使用するカメラです。レンズには、スコパー114mmF4.5、ヘリアー114mmF4.5、フォコター120mmF6.3が搭載されています。シャッターはエンベセットや旧コンパーが採用されています。フォクトレンダーがロールフィルムを使用する最初のカメラとして登場しました。

118フィルム使用カメラ

ロールフィルムカメラ：8.3×10.8cm判、または9×12判写真乾板との兼用で、コリニア12cmF6.8のレンズを搭載しています。

119フィルム使用カメラ

ロールフィルムカメラ：5×8cm判の6枚撮りカメラです。スコパー83mmF4.5、ヘリアー83mmF4.5、フォコター90mmF6.3のレンズが搭載され、シャッターはエンベセット、旧コンパーが使われています。これもフォクトレンダーがロールフィルムを使用する最初のカメラの一つです。

120フィルム使用カメラ

ロールフィルムカメラ：6×9cm判のカメラで、スコパー105mmF4.5、ヘリアー105mmF4.5、フォコター105mmF6.3のレンズが選べます。シャッターはエンベセット、イプソール、旧コンパーなどです。このモデルもロールフィルム使用初期のカメラです。
ベッサ (Bessa)：1929年発売のカメラで、6×4.5cm判から6×9cm判まで様々なフォーマットが存在します。初期モデルはスプリング機構が弱く、スプリングカメラに分類されないこともあります。戦後も改良された新型が登場しました。
プロミネント (Prominent)：1933年発売の高級機で、上下合致式連動距離計を備えています。独特な外観から「花魁」や「軍艦」と通称されることもあります。距離計は高精度で、6×9cm判と6×4.5cm判での撮影が可能です。レンズはヘリアー10.5cmF4.5。ゼンマイばねでレンズが繰り出す仕組みで、ボディにはフィルムの浮きを防ぐための穴が開けられています。光学式露出計も内蔵されており、露出調整が可能です。
イーノスI (Inos I)：1934年発売。プロミネントと同系統のデザインで、6×9cm判のカメラです。距離計は搭載されておらず、ヘリアー105mmF4.5またはスコパー105mmF4.5のレンズが使われています。シャッターはコンパーで、T、B、1～1/250秒の速度設定が可能です。
イーノスII (Inos II)：プロミネントと同系統のデザインを持ち、6×9cm判に対応しています。スプリングではなくゼンマイでチェーンを巻いてレンズを繰り出す構造です。レンズはスコパー10.5cmF4.5、ヘリアー10.5cmF4.5、スコパー11.8cmF4.8のいずれかが搭載され、シャッターはコンパーです。
ヴィルタス (Virtus)：1934年発売の高級機で、「花魁」プロミネントと同系列デザインを持ちます。6×4.5cm判に対応し、ヘリアー7.5cmF3.5、スコパー7.5cmF3.5、スコパー7.5cmF4.5のレンズが選べます。シャッターはコンパーまたはエンベセットで、距離計はありませんが、ファインダーのパララックスは自動補正されます。板バネ2枚による駆動方式を採用しています。
スーパーベッサ (RF Bessa)：1936年発売。距離計連動式の6×9cm判カメラで、6×4.5cm判での撮影も可能です。ヘロマー105mmF3.5、スコパー105mmF3.5、ヘリアー105mmF3.5のレンズが搭載されており、レンズ先端にイエローフィルターが蝶番式で取り付けられています。日本国内ではスーパーベッサIと呼ばれますが、英語圏ではRF Bessaと呼称されます。
ベッサI (Bessa I)：1950年発売。ベッサの後継機で、距離計は非搭載です。クローム仕上げの近代的な外観を持ちます。レンズはヴァスカー105mm4.5またはカラースコパー105mm3.5が搭載され、シャッターはプロンターSでB、T、1-1/250秒、セルフタイマー付き。
ベッサII (Bessa II)：1950年発売。クローム仕上げの近代的な外観を持ち、6×9cm判と6×4.5cm判での撮影が可能です。距離計連動でファインダーに一体化されています。カラースコパー105mmF3.5、カラーヘリアー105mmF3.5が搭載され、稀にアポランター105mmF4.5が搭載されたものもあります。日本ではスーパーベッサIIと呼ばれることがあります。
ベビーベッサ：1939年発売の6×6cm判カメラで、フォコター7.5cmF3.5またはスコパー7.5cmF3.5のレンズが搭載されています。折りたたみ式のファインダーを備えており、戦後の同名モデルと区別するため「ベッサシックス」と呼ばれることがあります。
ベビーベッサ：1948年発売。6×4.5cm判で、レンズはヴァスカーまたはカラースコパー75mmF3.5、シャッターはコンパーです。6×6cm判の同名モデルと区別するため「ベッサ64」と呼ばれることがあります。
ベビーベッサ：1948年発売。6×6cm判で、レンズはヴァスカーまたはカラースコパー75mmF3.5、シャッターはコンパーです。戦前のモデルや6×4.5cm判の同名モデルと区別するため「ベッサ66」と呼ばれます。小型の固定式ファインダーを備えています。
ペルケオI (Perkeo I)：1953年発売の6×6cm判カメラです。レンズはヴァスカー75mmF4.5または80mmF4.5、カラースコパー80mmF3.5が搭載され、シャッターはプロントまたはプロンターS。戦前のペルケオとはデザインが大きく異なります。
ペルケオII (Perkeo II)：1953年発売。6×6cm判で、レンズはカラースコパー80mmF3.5、シャッターはプロンターSまたはシンクロコンパー。こちらも戦前のペルケオとはデザインが異なります。
ペルケオE (Perkeo E)：1955年発売。6×6cm判で、ペルケオIIに単独距離計を組み込んだモデルです。

127フィルム使用カメラ

ペルケオ (Perkeo)：1933年発売の高級機で、3×4cm（ヴェスト半裁）判に対応しています。プロミネントと同系統のデザインを持ち、「小人」という意味の名前がついています。スプリング、チェーン、ギアを組み合わせた複雑な開閉制御方式を採用し、空気抜き穴も設けられています。レンズはヘリアー5.5cmF3.5、スコパー5.5cmF3.5、スコパー5.5cmF4.5が搭載されています。ファインダーは筒型と折畳式があり、それぞれアメリカ・イギリス向け、ヨーロッパ向けと推測されています。

135フィルム使用カメラ

ヴィトーシリーズ：24×36mm（ライカ）判のカメラシリーズです。普及版ながら美しいメッキ面を持ち、突起物を少なくしたデザインが特徴です。レンズはスコパー50mmF3.5（距離計なしモデル）、ウルトロン50mmF2、スコパー50mmF2.8、スコパー50mmF3.5（距離計付きモデル）が使われています。
ヴィトーI (Vito I)：1939年発売のスプリングカメラで、レンズはスコパー50mmF3.5です。
ヴィトーII (Vito II)：1950年発売。軍艦部が平坦になり、レリーズレバーが単純な丸棒になりました。レンズはカラースコパー50mmF3.5です。
ヴィトーIIa (Vito IIa)：1951年発売。レバー巻上げ式になり、レンズはカラースコパー50mmF3.5です。
ヴィトーIII (Vito III)：1951年発売。連動距離計を搭載し、前蓋が下に開くようになりました。レンズはウルトロン50mmF2。
* ヴィテッサシリーズ: 詳細は不明

これらの製品は、フォクトレンダーの技術力とデザインセンスを示すものであり、現在でも多くのカメラ愛好家によってコレクションされています。

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