フォトCD

フォトCD：写真デジタル化のパイオニア

1992年、イーストマン・コダック社とフィリップス社が共同で開発したフォトCDは、写真現像における画期的なシステムでした。ネガフィルムからデジタルデータへ変換し、CD-ROMに保存するこの技術は、写真保管と共有の方法に革命を起こす可能性を秘めていました。

フォトCDの仕組みと特徴

フォトCDは、1枚のCDに約100枚の写真をデジタルデータとして保存できるシステムです。コダック独自の符号化方式を用いており、CD-ROM XAおよびCD-iブリッジ仕様に準拠していました。このため、OSに依存することなく、CD-iプレーヤー、専用の再生機、パソコン、さらには一部のゲーム機など、幅広い機器で再生が可能です。ただし、CD-R方式であるため、マルチセッションに対応したCD-ROMドライブが必要でした。

写真の記録には、ネガフィルムを写真現像店に持ち込む必要があり、プリント写真からの直接書き込みはできませんでした。また、CDに保存された写真は、コダック準拠の印刷機器を使用することで、高画質の写真として出力することができました。

解像度は、一枚の写真につきBase/16から16Baseまでの5種類が同時に記録され、最大で2048×3072ピクセル（プロ仕様では4096×6144ピクセル）の高解像度に対応していました。この多様な解像度設定は、用途に合わせて最適な画質を選択できる柔軟性を提供していました。

普及と衰退

フォトCDは、その画期的な技術にもかかわらず、一般市場への普及には至りませんでした。当時、CD-ROMの普及率が低かったこと、デジタルスキャナの価格が急激に低下し、より手軽にデジタル化できるようになったこと、そしてコダックの特許に依存していた符号化方式などが、普及の妨げとなりました。

しかしながら、フォトCDはプロの写真家を中心に一定の評価を得ていました。フィルムをデジタル化するには高価なリールスキャンシステムが必要だった当時、フォトCDは安価で効率的なデジタル化手段を提供したからです。また、日本では1990年代後半に、デジタル写真集、特にグラビアアイドルの写真集の媒体として、フォトCDが用いられたこともありました。

現在では、ニッチな需要は残っていますが、コダックは後継システムとして「Picture CD」を提供しています。フォトCD用ディスクは、現在も一部のベンダーから入手可能ですが、規格に準拠していないディスクも存在するため、注意が必要です。

フォトCDに対応したゲーム機

当時、いくつかのゲーム機がフォトCDに対応していました。代表的なものとして、3DO、PC-FX、セガサターンなどが挙げられます。セガサターンは、専用の拡張カードが必要でした。

まとめ

フォトCDは、デジタル写真の歴史において重要な役割を果たしたシステムです。その技術は時代を先取りしていましたが、市場環境や技術革新の波に乗り遅れた結果、一般への普及には至りませんでした。それでも、プロの分野や特定の用途においては一定の貢献を果たし、デジタル写真の未来を切り開く礎を築いたと言えるでしょう。

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