フォルクスワーゲン・イオス

フォルクスワーゲン イオス：電動ハードトップと個性的なデザインが融合したオープンカー

フォルクスワーゲン イオスは、電動格納式ハードトップを備えた4シーターオープンカーとして、2005年末から2015年まで製造販売されていたモデルです。クーペカブリオレと呼ばれるタイプの車両で、その最大の特徴は、世界初となる5分割式の電動格納式ハードトップにあります。この革新的なルーフシステムは、25秒という短時間で開閉が可能であり、サンルーフのように頭上部分だけを開けることもできるなど、高い利便性を誇っていました。このルーフシステムの開発には、オープンカーであるダイハツ・コペンにも関わった自動車部品メーカーOASysが携わっています。

イオスのベース車両はフォルクスワーゲン ゴルフVですが、エクステリアデザインは大幅に変更されており、一見するとゴルフとは全く異なる印象を受けます。そのため、ゴルフIIIカブリオレの後継モデルと誤解されることもありますが、フォルクスワーゲン自身は、ゴルフIIIカブリオレの後継はニュービートル・カブリオレであり、イオスはゴルフとパサートの中間に位置する新しいジャンルの車であると説明しています。実際、イオスの車両設計は、前半分がゴルフ、後半分がパサートのコンポーネントを流用した構成となっています。

イオスは、当初2005年末の製造開始が予定されていましたが、風きり音に関する問題が発生したため、発売が遅延しました。欧州では2006年春、北米では同年夏、そして日本では同年10月に発売開始となりました。製造はポルトガルのVWオートヨーロッパ工場で行われ、日本市場からは2009年夏に撤退しました。2010年にはマイナーチェンジが行われ、ゴルフVI風のグリルを採用したフェイスリフトモデルが発表されていますが、この後期モデルは日本市場には導入されませんでした。

日本仕様のイオスには、2.0Lターボエンジンを搭載した「2.0T」と、3.2L V6エンジンを搭載した「V6」の2つのモデルがラインナップされていました。いずれもFF駆動、6速DSGトランスミッション、右ハンドル仕様でした。ボディカラーは6色、内装色は3色が用意されていました。欧州市場では、1.6Lと2.0Lの直列4気筒ガソリンエンジン、そして2.0Lの直列4気筒ディーゼルエンジンも選択可能でした。

イオスは、その独特のルーフシステムとスタイリッシュなデザインで、多くの注目を集めました。しかし、複雑なメカニズムを持つ電動格納式ハードトップは、故障のリスクも孕んでいました。実際、リコール情報として、自動変速機のクラッチ温度センサーに関する問題が報告されています。製造時の配線のかしめが不充分なため、誤信号が送られ、最悪の場合走行不能に陥る可能性がありました。この問題はリコールにより無償修理が行われました。

イオスは、フォルクスワーゲンが送り出した個性的なオープンカーとして、その存在感を示しました。しかし、生産終了後も、その革新的なルーフシステムや独特のデザインは、多くの自動車ファンに記憶されています。

もう一度検索