フォントノワの戦い (1745年)

フォントノワの戦い：18世紀の戦場

フォントノワの戦いは、1745年5月11日に現在のベルギー、フォントノワで行われたオーストリア継承戦争における重要な戦いです。フランス軍が、イギリス、オランダ、オーストリアの連合軍を破り、戦術と当時の戦争のあり方を今に伝える出来事として、歴史に名を刻んでいます。

戦いの背景

18世紀、ヨーロッパの勢力図は複雑に絡み合っていました。オーストリア継承戦争は、当初オーストリアの皇位継承問題から始まったものの、各国の思惑が絡み合い、勢力争いの様相を呈していました。フランスは当初バイエルンを支援していましたが、カール7世の死やバイエルンの単独講和により、ドイツ方面への関心を失い、イタリアと南ネーデルラントに注力することにしました。

フランス軍はモーリス・ド・サックスを指揮官に、南ネーデルラントへの大規模な攻勢を計画しました。ルイ15世も王太子ルイを伴い親征の姿勢を示し、スヘルデ川を下ってネーデルラントを分断し、フランドル地方の都市を攻略する戦略を立てました。

一方、連合軍はイギリス、ハノーファー、オランダ、オーストリアの混成部隊でした。オーストリアはプロイセンとの戦いに注力していたため、イギリスが主導権を握り、カンバーランド公ウィリアム・オーガスタスが総指揮を執りました。連合軍はフランス軍の動きを警戒し、ブリュッセルに集結して対応を協議しました。

サックスはトゥルネーの攻略を目指し、陽動作戦を展開しました。ヴァランシエンヌやモブージュに軍を集結させ、連合軍を欺瞞しました。その隙に主力部隊をトゥルネーに接近させ、包囲を開始しました。陽動作戦が成功し、サックスはアントアンとフォントノワ周辺を戦場に選定し、防御陣地を構築して連合軍を待ち構えました。

戦闘の展開

フランス軍は、アントアンとバリーの森の間にL字型の戦列を敷き、両側面を固めました。アントアンとフォントノワを要塞化し、戦列を強化しました。連合軍はフランス軍の左翼を弱点と見て攻撃を集中することにしました。

5月11日、両軍の砲撃戦から戦闘が開始されました。連合軍はフォントノワへの攻撃を試みましたが、フランス軍の激しい砲火に阻まれました。イギリス軍はバリーの森を迂回してウー堡塁を攻略しようとしましたが、フランス軍の待ち伏せ攻撃に遭い失敗しました。

イギリス軍は、左右両翼に敵の拠点を残したまま、フランス軍戦列への攻撃を開始しました。フランス軍は砲火を集中させ、イギリス軍に大きな損害を与えました。しかし、イギリス軍は屈せず前進を続け、フランス軍戦列に接近しました。

フランス軍近衛連隊とイギリス軍近衛歩兵連隊が激突し、激しい銃撃戦が展開されました。イギリス軍の交互一斉射撃の威力は絶大で、フランス軍は後退を余儀なくされました。サックスは予備兵力を投入し、戦列の強化を図りました。

フランス軍の反撃

イギリス軍は敵戦列を押し崩そうとしましたが、左右の堡塁とフランス軍部隊に阻まれ、進撃速度が低下しました。フランス軍は馬蹄型の陣形を構築し、イギリス軍を包囲する態勢を整えました。

フランス軍騎兵は数度にわたり突撃を試みましたが、イギリス軍の火力によって撃退されました。リシュリューは国王の護衛部隊を率いて突撃し、イギリス軍の進撃を食い止めました。

サックスはリシュリューに攻撃を中止させ、態勢を立て直させました。騎兵を正面に、歩兵を両側面に配置し、三方からの同時攻撃を敢行しました。アイルランド人旅団が「リメンバー・リムリック」と叫びながら突撃し、フランス軍は総力を挙げて反撃しました。

イギリス軍は激しい攻撃に耐えかね、徐々に後退を開始しました。カンバーランドは退却を指揮し、秩序を保って撤退しました。フランス軍は追撃を仕掛けましたが、イギリス軍騎兵の援護により、カンバーランドは安全な地域まで撤退することができました。

戦いの結果と影響

フォントノワの戦いは、フランス軍の勝利に終わりました。フランス軍はトゥルネーを占領し、フランドル地方の制圧を進めました。サックスは数々の勝利を重ね、フランス大元帥の称号を得ました。

ヴォルテールはこの勝利を記念して詩を創作し、国王の評判を回復させました。フォントノワの戦いは、18世紀の戦争の様相を示す好例として語り継がれています。

ヴォルテールの描写によって、フォントノワの戦いは美化され、不滅の戦いとなりました。将校が共通の文化世界に生き、騎士道精神が尊重される一方で、啓蒙思想が広まる時代。フォントノワの戦いは、そのような時代の戦争のあり方を象徴する出来事として、歴史に刻まれています。

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