フォン・エリック・ファミリー

フォン・エリック・ファミリー：栄光と悲劇の物語

序章：鉄の爪の系譜

アメリカン・プロレス界において、フォン・エリック・ファミリーは特別な存在感を放っています。その名を馳せたのは、プロモーターとして、そしてレスラーとして活躍したフリッツ・フォン・エリックとその家族たち。彼らを取り巻く数々の悲劇は、プロレス史に暗い影を落とすと同時に、一族の不屈の精神とプロレスへの情熱を際立たせています。

フリッツ・フォン・エリックは、ナチス・ドイツを思わせるギミックで人気を博し、テキサス州ダラスを拠点にレスリング団体を運営しました。彼の6人の息子たちは、父親譲りの才能を受け継ぎ、WCCW、WWF、全日本プロレスなど、多くの団体で活躍。その活躍は、華麗なるものだったのです。

しかし、運命の歯車は残酷にも回り始めます。長男の早逝を皮切りに、息子たちは相次いで若くしてこの世を去ります。病死、事故死、そして自殺…。次々と襲いかかる悲劇は、フォン・エリック・ファミリーを「呪われた一族」という影に閉ざしていくのです。

栄光の時代と相次ぐ悲劇

1980年代、フォン・エリック兄弟は全盛期を迎えました。華麗なテクニックと、父親譲りのアイアン・クロー（鉄の爪）を武器に、観客を魅了し続けました。しかし、その輝きは長くは続かず、1984年に三男デビッドが急死、1987年には五男マイクが自殺、1991年には六男クリスが自殺という悲劇に見舞われます。1993年には四男ケリーも薬物に溺れ、自殺を図り命を落とします。

この10年間で4人の兄弟が亡くなるという衝撃的な出来事。その悲劇は、プロレスファンに衝撃を与え、フォン・エリック・ファミリーを「呪われた一族」という暗いレッテルで覆い隠すことになります。兄弟たちの死因はそれぞれ違えど、若くして命を落としたという共通点に、多くの憶測や噂が飛び交いました。

父と子の絆、そして継承

数々の悲劇にも関わらず、フォン・エリック・ファミリーの物語は終わりませんでした。生き残ったケビンは、悲しみを乗り越え、プロレスラーとしての道を歩み続けました。そして2009年、フリッツ、ケビン、デビッド、ケリー、マイク、クリスの6人がWWE殿堂入りを果たすという栄誉に浴します。

さらに、ケビンの息子であるロスとマーシャルがプロレスラーとしてデビュー。三代に渡るプロレスラー一家としての歴史が刻まれます。ケリーの娘レイシーも、女子プロレスラーとして活躍したものの、2010年に引退しました。

ギミックと血縁

フォン・エリック・ファミリーには、血縁関係のないレスラーも含まれることがありました。フリッツの弟として活動したワルドー・フォン・エリックや、従兄弟を名乗ったランス・フォン・エリックなどは、あくまでもギミック上のファミリーでした。この点も、フォン・エリック・ファミリーの複雑な歴史の一端を垣間見ることができます。

アイアンクロー：一家を象徴する技

フォン・エリック・ファミリーを象徴する技といえば、アイアン・クローです。フリッツが得意としたこの技は、息子の世代にも受け継がれ、一族のシンボルとして広く知られています。

映画化と永遠の記憶

2023年末には、フォン・エリック・ファミリーの生涯を描いた映画『アイアンクロー』が公開されました。ケビン本人も制作に協力しており、一族の物語が再び脚光を浴びることになりました。

結語：伝説の家族

フォン・エリック・ファミリーは、輝かしい成功と、数々の悲劇という両面を背負った、伝説的なプロレス一家でした。彼らの物語は、プロレス界の歴史に永遠に刻まれ、多くの人々に感動と教訓を与え続けることでしょう。彼らの生き様、そしてその物語は、これからも人々の心に語り継がれていくに違いありません。

もう一度検索