フォークソノミー

フォークソノミーとは

フォークソノミー（Folksonomy）とは、インターネット上の情報に対し、利用者自身が自由にキーワード（タグ）を付与し、分類・整理を行う手法です。この言葉は、「民衆」を意味する英語の「folks」と「分類法」を意味する「taxonomy」を組み合わせた造語です。

従来のディレクトリ分類やロボット検索とは異なり、フォークソノミーでは、分類作業が万人に開かれており、ユーザーの共同作業によって行われます。図書館情報学で用いられる統制語彙ではなく、ユーザーが自由に作成したキーワードが用いられる点も大きな特徴です。

フォークソノミーは、インターネット上の膨大な情報の中から、必要な情報を見つけやすくするために生まれました。ユーザーが使い慣れた言葉で情報を分類するため、情報へのアクセスが容易になります。例えば、写真共有サイトのFlickr、ソーシャルブックマークのdeliciousやはてなブックマーク、動画共有サイトのニコニコ動画、画像投稿コミュニティサイトのpixivなどが、フォークソノミーを活用した代表的なサービスです。

フォークソノミーの特質

フォークソノミーは、インターネットという社会環境の中で発展しました。ユーザーは、他のユーザーがつけたタグや、そのユーザーがタグ付けした他のコンテンツを容易に確認できます。これにより、ユーザーは自分の感覚に合うコンテンツや、同じ興味を持つユーザーを見つけやすくなります。

フォークソノミーの魅力の一つは、その破壊力です。従来のトップダウン式の検索ツールに対抗し、ユーザー自身が主体的に分類・検索を行うことができます。これは、コミュニティ内で開発されたボトムアップ的な分類・検索ツールを支持する動きと言えるでしょう。

フォークソノミーは、ウェブの基礎プロトコルの一部ではありません。タグの登録や使用のための技術が提供されたことで、ウェブコミュニティの中で自然発生的に生まれました。コミュニティは、写真や映像などのコンテンツを共有・分類したり、既存のコンテンツを共同で分類するために作られています。

言葉の由来

フォークソノミーという用語は、情報アーキテクトのトーマス・ヴァンダー・ワルによって作られました。これは、ユーザーによる分類システムの動きを表すための造語です。例えば、W3Cがユーザー作成のタグを用いた「Annotea project」などがその例として挙げられます。ヴァンダーワルは、フォークソノミーを「役立つタグ付け」と定義しています。

フォークソノミーは、フォーク（大衆）とタクソノミー（分類学）を組み合わせた言葉です。タクソノミーは、「分類」を意味するギリシア語の「ταξισ」と、「管理」を意味する「νομοσ」から成り立っており、フォークソノミーは文字通り「人々による分類方法の管理」となります。

フォークソノミーは、民俗分類学とは異なります。民俗分類学は、人々が伝統的に植物や動物などを分類する体系を研究する学問です。

フォークソノミーのメリット

フォークソノミーは、情報検索の専門家が構築した統制語彙による分類法とは異なり、体系的ではありません。しかし、ユーザーは複雑な分類法を覚える必要がなく、手軽にコンテンツを分類できます。タグをその場で作成し、コンテンツにつけるだけで、分類作業が完了します。

また、フォークソノミーは常に変化し、進化し続けるオープンエンドな過程です。ユーザーの分類方法の変化に即座に対応できます。オープンソースやウィキペディアのように、個々の能力に差があっても、集団の力で専門家によるシステムに匹敵する成果を生み出すことができます。

フォークソノミーの最大のメリットは、情報検索の能力です。タグは、コンテンツの「だいたいの内容」を表すことができるため、情報を探しやすくなります。コンテンツを熟知したユーザーがタグ付けを行うため、その分類能力は洗練されていきます。

フォークソノミーによって生成されるカテゴリーは、一見すると奇妙に思えるかもしれません（例：「これはひどい」「後で読む」など）。しかし、そこにはフォークソノミーの価値があります。これらのカテゴリーは、コンテンツとユーザーの個人的な繋がりから生まれるものであり、同時にコミュニティの社会性も反映しています。フォークソノミーは、分類者の考えを含み、タグ付けした人と閲覧者とのコミュニケーション手段にもなります。もし誰かの分類手法に共感すれば、他のコンテンツも見ようという動機につながります。

フォークソノミーに対する批判

専門的な分類システムと比較すると、フォークソノミーにはいくつかの欠点があります。例えば、多義語や同義語の区別、単数形と複数形の区別などが曖昧になることがあります。タグ入力フォームの背後に分類エンジンがあれば、このような語形変化のばらつきは避けられるでしょう。

また、フォークソノミーには、誤った情報や故意による無意味なタグ付け（メタ・ノイズ）が発生する可能性があります。これは、検索能力の低下につながることもあります。トップダウン式の分類方式を支持する人は、専門家が構築したタグを使用することで、分類や検索がより効率的になると主張します。フォークソノミーの欠点を補うためには、統制語彙とフォークソノミーの共同作業が必要となるでしょう。

フォークソノミーとセマンティック・ウェブ

フォークソノミーは、ウェブページにメタデータ（索引語）を付与することで、セマンティック・ウェブの構築に貢献する可能性があります。メタデータは、検索エンジンの精度を高めるはずです。しかし、ウェブページ作成者が、メタデータ埋め込みという手間のかかる作業にどれだけ協力するかは不透明です。ダブリン・コアメタデータ標準は、簡易ながら検索結果を上位に表示できる効果があるにもかかわらず、利用しているウェブページ管理者はごくわずかです。

フォークソノミーは、トップダウン式の分類に比べて、分散的でコストの低い分類方法です。もしフォークソノミーがウェブプロトコルに組み込まれれば、セマンティック・ウェブはより早く構築されるかもしれません。

事業の中のフォークソノミー

フォークソノミーは、ユーザー主体の分類システムであり、実装コストが低いという利点があります。フォークソノミー支持者は、これが伝統的な分類法に代わる、ローコストで便利なコンテンツ分類法になると考えています。社内文書や事業に対するフォークソノミーを、「新興の事業用分類法」とみなす人もいます。また、フォークソノミーは、職場での民主的な運営や、業務管理を社員に分散させる手法としても役立つと考えられています。

まとめ

フォークソノミーは、ユーザー自身が自由にタグ付けを行うことで、情報を柔軟に分類・整理する革新的な手法です。従来の分類法とは異なる視点を提供し、インターネット上での情報検索をより便利に、より楽しくする可能性を秘めています。課題もありますが、そのメリットは大きく、今後ますます発展していくと考えられます。

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