フォード GPA

フォードGPA：水陸両用車の歴史と冒険

フォードGPAは、第二次世界大戦中にアメリカ軍が使用した水陸両用車であり、「海のジープ（Seagoing Jeep）」を意味する“SEEP”や「アイゼンハワーの大陸反攻用タクシー」という愛称で親しまれました。その開発経緯、運用、そして戦後の冒険について詳しく見ていきましょう。

開発の背景

1940年、アメリカ軍は小型偵察車としてウィリス・オーバーランドの「ウィリスMB」とフォード・モーターの「フォードGPW」を採用しました。これらは「JEEP」として知られ、軍用車両の傑作となりました。この成功を受けて、アメリカ軍は小型の水陸両用車両の開発を計画し、フォードとマーモン・ヘリントンに設計を依頼しました。

マーモン・ヘリントンの設計案は一体型の舟形車体を持つものでしたが、重量が軍の要求を超えていました。フォードの設計案はフォードGPWのフレームに舟形車体を載せたもので、こちらも重量の問題がありました。最終的に、両社の設計案を統合し、フォードが中心となって開発が進められることになりました。

開発と生産

こうして「Ford GPA（Ford General Purpose Amphibious：フォード水陸両用汎用車）」と命名された新設計案は、モノコック構造の舟形車体にフォードGPWのエンジンと走行装置を組み込む形で完成しました。1942年4月には試作車が水上走行試験に成功し、正式に採用されました。フォードは制式採用に先駆け、5,000台の量産発注を受け、同年5月には月産3,000台を達成しました。

戦場での運用

フォードGPAは、1943年7月のシチリア島上陸作戦やイタリア侵攻作戦で多数使用されました。しかし、車体の重量増加により、陸上走行性能が低下し、現場での評価は高くありませんでした。水陸両用輸送車としては、より大型のDUKWが普及するにつれて補助的な任務に回され、偵察車両としての転用も試みられましたが、その大きさから小回りが利かず、活躍の場は限られました。

海兵隊でも試験運用が行われましたが、小型であるため波のある海面での運用に不安があるとして、全面的には採用されませんでした。結果として、生産は1943年に打ち切られ、生産された車両の半数はソビエト連邦へレンドリースされました。ソビエト連邦ではフォードGPAを「GAZ-46」としてコピー生産し、改良型も開発・生産しました。

戦後の利用と冒険

第二次世界大戦後、フォードGPAは西側諸国に少数供与されたほか、多くが民間に払い下げられ、港湾作業やレジャー用として利用されました。また、その独特なデザインと機能から、愛好家も存在します。

1950年代には、オーストラリアの冒険家ベン・カーリン夫妻が改造したフォードGPA「ハーフ・セーフ号」で大西洋横断を含む世界一周を達成しました。この冒険の記録は書籍『たつた二人の大西洋 ハーフ・セーフ号』として出版されています。

フォードGPAは、その開発から運用、そして冒険まで、様々な歴史を持つ水陸両用車です。

関連項目

水陸両用車
DUKW
* JEEP

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