DUKW

DUKW：戦場の水陸両用車から、観光バス、そして災害救助車両へ

第二次世界大戦において、アメリカ軍の水陸両用車DUKWは、その高い機動性と汎用性から重要な役割を果たしました。本稿では、DUKWの開発から戦後における民生利用まで、その歴史と多様な活用例について詳細に解説します。

DUKWの開発と軍事利用

ゼネラルモーターズ（GM）GMC部門が開発したDUKWは、優れた耐航性を持ち、イギリス海峡の独力横断も可能でした。その名は、GMの命名規則に基づきます。

D: 1942年設計
U: 水陸両用（utility vehicle）
K: 全輪駆動
W: 後二軸駆動

兵士たちからは「ダック」の愛称で親しまれ、ノルマンディー上陸作戦をはじめとする様々な戦場で活躍しました。上陸作戦では艦船と海岸間の輸送を担い、その後も陸上輸送や渡河作戦などでその能力を発揮しました。太平洋戦争や朝鮮戦争にも投入され、連合国への供与車両の中には1980年代まで使用されたものもあったほどです。

DUKWは、GMC CCKW 353トラックをベースに、舟型の車体に3軸6輪の足回りを備え、後部には水上航行用のスクリュープロペラを搭載していました。最高速度は陸上80km/h、水上10km/hを誇り、排水ポンプや空気圧調整装置といった、当時としては革新的な装備も備えていました。兵員25名または貨物2.5t（陸上）、兵員50名または貨物5t（水上）の輸送能力を有し、M2A1 105mm榴弾砲の輸送も可能でした。

ソ連における国産化：BAV

レンドリース法によりソ連にも供与されたDUKWは、ZiS-485（ソ連軍呼称：BAV）として国産化されました。ZiS-123エンジンやZiS-151の駆動系を流用し、荷室の延長やテールゲートの設置など、ソ連独自の改良が加えられました。その後継車種としてZIL-485Aも開発されましたが、生産数は限られました。BAVはワルシャワ条約機構軍などで1980年代まで使用されました。

戦後の民間利用：多様な活躍

第二次世界大戦後、大量のDUKWが民間に払い下げられました。消防組織や沿岸警備隊での災害救助活動、観光用車両への改造など、様々な用途で活躍しました。特に日本においては、戦後の交通事情の混乱を背景に、400両以上が路線バスに改造され、1950年代頃まで各地で運用されました。これは、DUKWの水陸両用機能とは無関係に、単純な輸送手段として利用された珍しい事例と言えます。

また、近年ではオーストラリアのキュランダにあるテーマパークで、熱帯雨林探検ツアーの車両として12台のDUKWが現役で使用されており、南半球最大のDUKWコレクションとなっています。神戸ハーバーランドでは「スプラッシュ神戸」として観光用車両として運行されていましたが、老朽化により2017年に事業を終了しています。

まとめ

DUKWは、その高い性能と汎用性から、戦場のみならず、戦後も世界各地で様々な形で活躍しました。その歴史は、技術革新や社会情勢の変化を反映し、現代にまで続くDUKWの物語は、私たちに多くのことを教えてくれます。 21,000両以上という生産数からも、その存在感の大きさが伺えます。 DUKWは、単なる軍用車両という枠を超え、人々の生活に深く関わってきた一台と言えるでしょう。

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