フォード・オーストラリア

フォード・オーストラリア：91年の歴史とオーストラリア自動車産業への貢献

フォード・オーストラリアは、アメリカ合衆国のフォード・モーターが1925年に設立したオーストラリアにおける子会社です。当初はカナダのフォードから部品を供給され、モデルTの組み立てからスタートしました。その後、イギリス・フォードからの車両や部品の輸入、カナダ製V8エンジンの採用など、グローバルな連携を活かしつつ、オーストラリアの市場に適したモデルを生産してきました。

特に1972年に登場したXAファルコン以降は、設計・開発において完全にオーストラリア独自の路線を歩み始めます。オーストラリアの過酷な道路環境に耐えうる、独自の改良が加えられたファルコンは、オーストラリアを代表する自動車の一つとなりました。さらに、2004年にはBAファルコンをベースとしたSUV、テリトリーも開発・発表され、オーストラリア市場におけるフォードの地位を盤石なものにしました。これらのモデルは、オーストラリアの自動車文化に大きな影響を与えました。

しかし、2013年、フォード・オーストラリアは衝撃的な発表を行います。ジーロングとブロウドメドウスの工場を2016年10月に閉鎖するという、オーストラリアでの自動車生産からの撤退です。長年にわたる生産活動に終止符を打つこの決定には、さまざまな要因が絡み合っていました。

まず、オーストラリアでの生産コストの高さが挙げられます。アジアやヨーロッパの工場と比較して、生産コストが大幅に高かったことが、撤退の大きな理由の一つです。また、ファルコンなどの大型セダン市場の縮小も、生産継続を困難にする要因となりました。さらに、過去数年間の巨額な損失も、撤退決定を後押ししたと考えられます。

フォード・オーストラリアの閉鎖は、オーストラリアの自動車産業に大きな打撃を与えました。ブロウドメドウス工場は1959年の操業開始以来、400万台を超えるフォード車を生産し、多くの雇用を創出していました。工場閉鎖により、1200人以上の従業員が職を失うこととなりました。

2016年10月7日、ジーロングとブロウドメドウス工場は正式に閉鎖され、91年にわたるフォード・オーストラリアの自動車生産の歴史に幕が下りました。最後の生産車両となったファルコンとテリトリーは、オークションで販売され、その収益は寄付されました。このイベントには、フォード・オーストラリアの社長兼CEOも参加し、歴史的な出来事を象徴する場面となりました。

フォード・オーストラリアの歴史は、単なる自動車メーカーとしての歴史ではありません。オーストラリアの自動車文化を形作り、発展させてきた歴史であり、その功績は長く記憶されることでしょう。モデルTの組み立てから始まり、独自のモデルの開発、生産、そして撤退まで、フォード・オーストラリアの歩みは、オーストラリアの産業発展と深く結びついていました。この歴史を振り返ることで、オーストラリアの自動車産業の変遷、そしてグローバル化の波がもたらした影響を理解することができます。フォード・オーストラリアの遺産は、今後もオーストラリアの自動車史に刻まれたままとなるでしょう。

主要な出来事

1925年: ビクトリア州ジーロングに設立。モデルTのCKD生産開始。
1934年: オーストラリア独自モデルであるute(ユート)の開発。
1959年: ブロードメドウス工場操業開始。ファルコンの生産開始。
1967年: オーストラリアでのフォード車累計生産台数100万台突破。
1972年: 完全オーストラリア設計のXAファルコン登場。
2004年: BAファルコンをベースとしたSUV、テリトリーを発表。
2013年: 2016年10月をもって工場閉鎖、オーストラリアでの自動車生産から撤退することを発表。
2016年: ジーロングとブロウドメドウス工場閉鎖。91年の歴史に幕。

フォード・オーストラリアは、オーストラリアの自動車産業における重要な役割を果たし、多くのオーストラリアの人々の記憶に刻まれた企業です。その歴史と貢献は、未来の自動車産業の発展に役立つ貴重な教訓となるでしょう。

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