フォード・サンダーバード

フォード サンダーバード：半世紀にわたる伝説の高級車

はじめに

サンダーバードは、アメリカのフォード社が製造した高級スペシャリティーカーです。愛称は「T-バード」として親しまれ、1955年から2005年まで、実に50年以上にわたって製造されました。その歴史は、アメリカの自動車産業、そしてカーデザインの歴史そのものを反映しています。本稿では、各世代のモデルの特徴や販売状況、技術革新などを詳細に解説します。

初代モデル (1955-1957)：クラシック・バーズ

1954年のデトロイト自動車ショーで発表された初代サンダーバードは、目標を大きく上回る販売台数を記録し、その成功は後の世代への大きな影響を与えました。特徴的なグラスファイバー製ハードトップ、292V8エンジン、そしてオプション設定の312スペシャルV8エンジンは、当時のアメリカ車のトレンドを反映したものでした。1956年にはスペアタイヤの位置変更や換気口の追加、1957年には過激なスタイリングへの変更など、年々進化を遂げました。1957年モデルはフォード最後の2シーターとなり、そのスタイリングは後のモデルにも影響を与えました。

2代目モデル (1958-1960)：スクエア・バーズ

初代モデルの成功を受け、市場拡大を目指した2代目サンダーバードは、4シーターへと進化しました。他車種と共用可能なシャシーを採用し、車内空間の拡大とコンパクトな外装を実現。独自のスクエアなスタイリングは、この世代の特徴です。352V8エンジンやエアスプリングサスペンション（オプション）といった新技術も採用されました。発売年にはモーター・トレンド誌のカー・オブ・ザ・イヤーに輝き、販売台数も大幅に増加しました。1959年にはデザインの変更や、マローダーV8エンジンの搭載モデルなども登場しました。

3代目モデル (1961-1963)：ビュレット・バーズ

流線型のスタイリングが特徴的な3代目サンダーバードは、390V8エンジンを搭載。インディアナポリス500のペースカーにも選ばれ、高い人気を博しました。7万台を超える販売台数を記録し、スポーツロードスターモデルや、エルビス・プレスリーも所有したことで知られるモデルも登場しました。ランドーモデルは、特徴的なデザインで後のモデルにも影響を与えました。

4代目モデル (1964-1966)：フレアー・バーズ

フラットデッキスタイルを採用した4代目サンダーバードは、フォーマルな外観となりました。390V8エンジンは最高速度200km/hに達する性能を誇りました。輸出仕様のサスペンションなども設定されました。スポーツロードスターモデルも継続され、販売台数は9万台を超えました。1965年にはフロントディスクブレーキが標準化され、1966年には428V8エンジン搭載オプションも登場しました。また、特別なオーダーで427ハイパフォーマンスV8エンジンを搭載することも可能でした。

5代目モデル (1967-1971)：グラマー・バーズ

フォード・マスタングの登場によって市場環境の変化を受け、5代目サンダーバードは高級車市場への移行を目指しました。大型化し、リンカーンに似た豪華なデザインが特徴です。ボディは専用フレームとなり、4ドアモデルも登場しましたが、販売は芳しくありませんでした。この世代は、特徴的なフロントグリルやヘッドライト、ボディデザインによって「グラマー・バーズ」と呼ばれます。1970年には大幅なデザイン変更を受け、「バンキー・ビーク・バード」と呼ばれる個性的なモデルが登場しました。

6代目モデル (1972-1976)：ビッグ・バーズ

429V8および460V8エンジンを搭載した6代目サンダーバードは、歴代最大の重量を誇りました。しかし、燃費の悪さとオイルショックの影響により、販売には苦戦しました。

7代目モデル (1977-1979)：トリノ・バーズ

フォード・トリノのシャシーを流用した7代目サンダーバードは、小型軽量化を実現。シャープなデザインと低価格化により、良好な販売成績を収めました。

8代目モデル (1980-1982)：ボックス・バーズ

フォード・フェアモントと同じFOXプラットフォームを採用した8代目サンダーバードは、さらに小型化されました。ボックス型デザインとコンシールドヘッドライトが特徴です。販売台数は初年度こそ好調でしたが、その後は減少しました。

9代目モデル (1983-1988)：エアロ・バーズ

エアロダイナミックなボディとターボクーペの登場により、スポーティなイメージへと変貌を遂げた9代目サンダーバード。ターボクーペは高い評価を受けました。30周年記念モデルやエランモデルも登場しました。

10代目モデル (1989-1997)：スーパー・バーズ

4輪独立懸架や高いエアロダイナミクス性能を備えた10代目サンダーバード。V8およびV6モデルがラインナップされました。しかしコスト管理の悪さが問題視されました。スーパークーペは1995年に生産終了。

11代目モデル (2002-2005)：レトロ・バーズ

初代モデルを現代風にアレンジしたレトロスタイルの最終モデル。2シーターコンバーチブルで、高い人気を博しましたが、2005年に生産終了となり、サンダーバードの歴史に幕を閉じました。

まとめ

サンダーバードは、時代とともにデザインや技術を進化させながら、長きにわたり愛され続けたモデルです。その歴史は、アメリカの自動車文化の一端を垣間見ることができる貴重なものです。

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