フォード・トーラス

フォード・トーラス：アメリカを代表するセダンの歴史

フォード・トーラスは、フォード・モーターが製造・販売した普通乗用車です。1985年から2022年まで、長きに渡り世界中で愛され、幾度ものモデルチェンジを経て進化を遂げました。アメリカ市場だけでなく、日本市場にも長年輸入され、独特の存在感を放っていました。

初代 (1985-1991年)：革新的デザインと圧倒的な人気

初代トーラスは、30億ドルもの巨額な開発費を投じ、当時の西ドイツ車や日本車を徹底的に研究して開発されました。LTDの後継車種として登場したこのモデルは、従来の保守的なデザインを一新。エアロダイナミックなボディは、Cd値がセダンで0.33、ワゴンで0.35という高い空力性能を誇り、アメリカ市場で大きな成功を収めました。ヘッドライト形状から「デカ目」の愛称で親しまれたそのスタイリングは、当時のアメリカ人の嗜好を的確に捉え、1989年には全米販売ナンバー1に輝くほどの人気となりました。搭載エンジンは3.0L V型6気筒OHV、2.5L 直列4気筒OHVに加え、1988年には3.8L V型6気筒OHVが追加されました。高性能版であるSHOはヤマハと共同開発した3.0L V型6気筒DOHCエンジンを搭載し、スポーティな走りを実現していました。

日本市場においても、1988年からオートラマを通じてセダン、ワゴン、SHOの3種類が輸入・販売されました。

2代目 (1992-1995年)：進化したスタイリングと継続的な人気

1992年に登場した2代目は、基本的なメカニズムは初代を継承しつつ、内外装のデザインを一新しました。ヘッドライト形状は「細目」と呼ばれ、先代とは異なる印象を与えました。セダン、ワゴン、SHOの3種類のバリエーションが用意され、先代に続く人気を維持。ホンダ・アコードやトヨタ・カムリといったライバル車とトップの座を争いました。SHOは、3.0Lモデルに加えて3.2Lモデルも追加されました。日本市場では、初代に続き好調なセールスを記録し、歴代トーラスで最も多く販売されたモデルとなりました。1994年からは、輸入販売元がオートラマからフォード・モーターに変更されました。

3代目 (1996-1999年)：オーバルデザインと右ハンドル仕様の登場

1996年に登場した3代目は、エンジンや駆動系統も刷新されました。フォードが推進していた「オーバルデザイン」を採用したエクステリアは、「丸目」や「ウーパールーパー」の愛称で呼ばれました。しかし、このデザインはアメリカ市場でも不評で、販売は低迷しました。日本市場でも、右ハンドル仕様が初めて導入されたものの、デザインや大型化が原因で販売は振るいませんでした。

4代目 (2000-2007年)：デザイン変更と販売低迷

4代目は、3代目の不評だったオーバルデザインを大幅に変更し、より保守的なデザインを採用しました。しかし、このデザイン変更は逆に個性を失い、販売台数の減少に歯止めをかけられませんでした。ワゴンは2004年、セダンは2006年に生産が終了しました。日本市場への正規輸入はありませんでした。

5代目 (2008-2009年)と6代目 (2010-2019年)：ファイブハンドレッドからの改名とSHOの復活

5代目は、従来のファイブハンドレッドを改名してトーラスとして復活。6代目は、高性能版SHOが復活し、3.5L V型6気筒DOHCエンジンと、EcoBoost 3.5L V型6気筒DOHC直噴ツインターボエンジンが搭載されました。6代目はポリスインターセプターのベースモデルとしても有名です。2018年には北米市場からの撤退が発表され、生産終了となりました。

7代目 (2016-2022年)と8代目 (2022年-)：中国・中東市場向けモデル

7代目は中国市場向けに開発され、長安フォードで生産されました。2020年からは中東市場にも輸出されました。8代目は、モンデオをベースに中東市場で販売されています。

ポリスインターセプター：パトカーとして活躍

フォード・トーラスをベースとしたポリスインターセプターは、アメリカ各地の警察で活躍するパトカーとして広く知られています。高い安全性と信頼性を備え、多くの警察車両として採用されています。覆面パトカー仕様のオプションも用意されており、様々なシーンで活躍しています。

フォード・トーラスは、アメリカ自動車史において重要な地位を占めるセダンと言えるでしょう。その歴史と進化は、時代の変化と自動車技術の進歩を象徴しています。様々なバリエーション、そしてパトカーとしての活躍は、トーラスという名前を長く人々の記憶に刻み込んできました。

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