フォード/シムカ・ヴデット

ヴデット（Vedette）

ヴデットは、1948年から1961年までの間にフランスのフォードとその後のシムカによって製造された大型乗用車です。このモデルは、フォードのアメリカ本社からのデザインを元にしており、多くの技術革新が取り入れられました。

フォード・ヴデット (1948-1954年)

ヴデットは1948年のパリサロンで初めてお披露目され、1949年型マーキュリーの小型版としてデザインされました。そのボディデザインは、フェンダーを車体に一体化させるスタイルが特徴で、サスペンションは前輪にウィッシュボーン式独立懸架、後輪には半楕円リーフスプリング支持の固定軸が採用されています。これにより、米欧におけるフォード車の近代化が反映されています。

実際、このモデルの基礎は、1943年に亡くなったフォード社の社長エドセル・フォードの意向にあり、彼の腹心であるデザイナーのボブ・グレゴリーが第二次世界大戦中から手がけていました。しかし、1946年に発表されたスチュードベイカー1947年モデルのデザインに影響され、エドセルの息子である新社長ヘンリー・フォード2世は、グレゴリーの提案を見直す必要があると判断しました。その結果、余剰となったグレゴリー案の大型モデルは1949年型マーキュリーとして商品化され、小型モデルがフランスでヴデットとして製造されることとなりました。

エンジンには、フランス・フォード車に搭載されていた2.23リットルのフォードV8エンジンが使用され、ボディスタイルは4ドアファストバックセダンを中心に、2ドアのクーペやカブリオレ、オープンできるルーフの「サンライナー」などのバリエーションが用意されました。1950年と1952年にはマイナーチェンジが行われ、ファストバックスタイルが撤廃され、準ノッチバック型へと変更されました。1952年には、新たに上級モデル「Vendôme」や5ドアワゴン「Abeille」が追加されましたが、品質のばらつきやストライキの影響により、期待された販売実績には達しませんでした。

シムカ・ヴデット (1954-1961年)

1954年6月、フォード・フランスがシムカに買収されると、ヴデットは新型モデルに移行し、シムカのブランドで販売されました。新型はより伝統的な4ドアノッチバックセダンのスタイルを採用し、アメリカ製フォード車に似たデザインとなりました。エンジンは、依然としてフォードV8を使用し、排気量は2,351ccで最高出力は80馬力を実現しています。

このモデルでは、技術的な革新が見られ、マクファーソン式ストラット独立サスペンションが初めて採用されました。サブネームを付けたさまざまなグレードが用意され、1885年には「マーリイ」という5ドアワゴンが追加されました。シムカによって販売数は増加し、1950年代には日本にも輸入され、さまざまな用途で用いられました。1958年にはボディデザインが一新され、大きなテールフィンが特徴になり、アメリカ車的な雰囲気が強まりました。

生産は1961年夏まで続き、シムカのブラジル法人では1969年まで生産されていました。最終的に、シムカ・ヴデットは合計173,288台が生産され、アリアーヌモデルも人気を博しました。ヴデットは、フォードとシムカの両方の歴史を持つ重要なモデルとなりました。

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