フォーマット (ストレージ)

記憶装置のフォーマットとは

HDDやSDカードなどの記憶装置を、コンピュータやデジタルカメラなどの機器で使用できるように準備する作業を「フォーマット」と呼びます。これは単なる初期化ではなく、データを記録するための基盤を整える重要なプロセスです。デジタル家電では、関連機器でデータを扱うための特別な情報を記録する「アプリケーションフォーマット」も必要になる場合があります。

日本では、フォーマットを「初期化」と呼ぶことがありますが、本来、フォーマットは初期化の一部であり、初期化そのものではありません。

フォーマットの概要

記録装置は、そのままではデータを記録できません。データを記録するためには、「ファイルシステムの識別子」「パーティション情報」「ディレクトリやファイルの名前や構成情報」といった初期設定が必要です。この初期設定が完了して初めて、特定のディレクトリやファイルを作成できます。初期化の方法は、ファイルシステムによって異なります。

フォーマットの種類

フォーマットには、大きく分けて「物理フォーマット」と「論理フォーマット」の2種類があります。

物理フォーマット

物理フォーマット（ローレベルフォーマット）とは、記録媒体のデジタル信号列を、記憶装置が読み書きできる状態に初期化することです。書き込み可能なディスク媒体（磁気ディスクや光ディスクなど）の場合、トラックやセクターなどの信号列を含めてディスク全体を規定パターンで書き直します。これには、セクター内のプリアンプル形成、初期化データ列、誤り訂正符号の書き込みも含まれます。

かつては、フロッピーディスクや初期のハードディスクではユーザー自身が物理フォーマットを行うことがありました。しかし、ハードディスクの大容量化と高密度化に伴い、ヘッドのシーク機構がステッピングモーターからサーボモーターに切り替わり、ユーザーが物理フォーマットを行うことはできなくなりました。現在、物理フォーマットは、工場で専用の装置によって行われています。

ただし、近年では、一部のハードディスクメーカーが、コントローラーを直接操作して全領域に上書き処理するソフトウェアを無償で配布しています。物理フォーマットは、論理フォーマットよりも処理時間が大幅に長くなります。

論理フォーマット

論理フォーマットとは、物理フォーマットが完了した記憶媒体上に、パーティションやファイルシステムに必要なデータを書き込むことです。一般的に「フォーマット」という場合は、論理フォーマットを指すことが多いです。

多くのOSでは、ファイルシステム作成時に「クイックフォーマット」というオプションを選択できます。これは、メディアの物理フォーマットが完了していることを前提として、最低限必要なファイルシステムデータを書き込むことで、フォーマット時間を短縮するものです。クイックフォーマットに対して、通常フォーマットを行うと、ハードディスク上の全セクターに対してテスト読み込みまたは書き込みを行うため、時間がかかります。

記憶媒体のフォーマット後容量は、ファイルシステムなどに使える容量ですが、実際にユーザーがデータとして使える容量は、パーティションやファイルシステムなどの情報の容量分を除いたものになります。

フォーマットとデータ消去の関係

物理フォーマットとデータ消去

物理フォーマットを実行すると、以前に記録されていたデータは消去され、通常の方法では読み出しが困難になります。ただし、専門的な技術や機材を使用すれば、データの痕跡を解析できる可能性も指摘されています。そのため、機密性の高いデータを完全に消去するには、記憶媒体の信号列を複数の特殊な規定パターンで複数回書き直すことが推奨されています。このような機能を備えたデータ消去ソフトウェアも市販されています。

パーソナルコンピュータでは、フロッピーディスク時代には、物理フォーマットが一般的に行われていましたが、HDDなどの大容量メディアでは、処理時間の長さから専用ツールなどが必要となる非一般的な行為となりました。

Mac OSでは、標準で付属のソフトウェアで物理フォーマットが可能です。macOSでは、ディスクユーティリティでセクタに0を書き込む「ゼロフィル」などのオプションを利用できます。また、空き領域のみのデータ消去も可能です。Windowsでは、コマンドで空き領域の痕跡消去が可能です。また、Vista以降の「通常フォーマット」では対象領域にゼロフィルを行うようになりました。

論理フォーマットとデータ消去

論理フォーマットでは、以前のデータが痕跡として残ることがあります。この痕跡は、特殊なソフトウェアを使えば容易に読み出せるため、プライバシーやセキュリティ上の問題となります。記憶媒体上のファイルを単に削除した場合も同様です。コンピューターで初期化やフォーマットを行う際に、どちらの形式なのかを確認することが重要です。また、デジタル機器の場合、フォーマットや消去処理が実際どのように行われるか不明確な場合も多いです。機器を手放す際には、ダミーデータで全容量を埋めるか、物理的に破壊することが望ましいでしょう。

アプリケーションフォーマット

デジタル家電では、ディスクメディアやメモリーカードなどを利用するために必要なデータを書き込むことを「アプリケーションフォーマット」と呼びます。これは、ストレージ内のデータを消去する行為とは無関係です。アプリケーションフォーマットは、デジタル機器で文書、音声、画像、動画などの情報を特定の形式や規格で扱うためのものです。最近のデジタル機器では、メディアの論理フォーマットにコンピュータ由来のものを使用したり、ファイルフォーマット上に上位データ構造として実現するものが多いです。

また、デジタル機器で実際に情報を記録できる容量は、フォーマットで必要な容量を差し引いたものになります。データ圧縮形式が使用されている場合は、記録容量と実際に読み書きできるデータ容量が異なることがあります。

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