フォールディングカメラ

フォールディングカメラとは、その名の通り、本体を折り畳むことができるカメラの総称です。長い蛇腹（じゃばら）を折りたたみ、底板を兼ねる前蓋を閉じることで、薄い箱型になるのが最大の特徴です。この構造により、携帯性が飛躍的に向上し、特に写真乾板を使用していた時代には、その利便性から広く普及しました。

フォールディングカメラが隆盛を極めた背景には、写真技術の発展と密接な関係があります。初期のカメラは非常に大型で持ち運びが困難でしたが、フォールディングカメラは、その問題を解決し、より多くの人々が手軽に写真撮影を楽しめるようにしました。特にロールフィルムが登場する以前は、この形式のカメラが市場の主流であり、写真愛好家にとって欠かせない存在でした。

代表的なメーカーとしては、ドイツのイデアル社や、日本の小西六（現コニカミノルタ）のリリーなどが挙げられます。これらのメーカーは、高品質なフォールディングカメラを数多く生産し、その技術とデザインは、後世のカメラに大きな影響を与えました。特にイデアル社は、高度な光学技術を駆使したレンズで知られ、その製品は現在でもコレクターの間で人気があります。小西六のリリーは、日本のカメラ産業黎明期において、重要な役割を果たし、国産カメラの発展に貢献しました。

1889年にコダック社がロールフィルムを発売したことは、フォールディングカメラの普及に大きな拍車をかけました。それまで写真乾板を使用していたカメラは、撮影ごとに新しい乾板をセットする必要があり、手間がかかりました。ロールフィルムの登場により、連続撮影が可能となり、フォールディングカメラの利便性はさらに向上しました。これにより、アマチュア写真家層が拡大し、フォールディングカメラは一般家庭にも浸透していきました。

しかし、技術の進歩とともに、フォールディングカメラは徐々に姿を消していきます。その後、蛇腹をバネの力で自動的に伸ばすことができるスプリングカメラが登場し、フォールディングカメラは世代交代を迎えます。スプリングカメラは、フォールディングカメラの利便性をさらに進化させ、より操作性が向上しました。それでも、フォールディングカメラはその独特なデザインと機構から、現在でも多くのカメラ愛好家から愛され、その歴史的な価値が再認識されています。

フォールディングカメラは、写真技術の歴史において、非常に重要な役割を果たしました。その登場は、写真撮影をより身近なものにし、多くの人々が写真の楽しさを知るきっかけとなりました。また、その洗練されたデザインは、現代においても魅力的に映り、カメラのデザイン史においても重要な位置を占めています。

参考文献：
『クラシックカメラ専科』朝日ソノラマ

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