フジパン

フジパン株式会社の概要

フジパン株式会社は、愛知県名古屋市瑞穂区に本社を構える、日本の大手製パン会社です。1922年（大正11年）に「金城軒」として創業し、菓子とパンの製造販売から始まりました。戦時中の企業整備令により一時廃業を余儀なくされましたが、戦後、「富士精糧工業」としてパン委託加工工場として再開しました。その後、1951年に富士製パン株式会社を設立し、製パン業を本格的に再開しました。

フジパンは、山崎製パン、敷島製パンと並ぶ日本三大製パン会社の一角を占めており、パン製造だけでなく、セブンイレブン・ジャパン、ファミリーマート、ミニストップなどの大手コンビニエンスストアにも惣菜を供給しています。

フジパンの歴史

金城軒の創業と戦時下の廃業

1922年（大正11年）5月1日、名古屋市中区で舟橋甚重が「金城軒」という菓子とパンの製造小売店を創業したのが、フジパンの始まりです。しかし、第二次世界大戦中の1942年（昭和17年）に、企業整備令により強制的に廃業を余儀なくされました。

富士精糧工業としての再開

戦後の1946年（昭和21年）3月、愛知県食糧課からパン委託加工工場としての許可を得て、同年5月1日に名古屋市瑞穂区で「富士精糧工業」として事業を再開しました。「富士」という名前は、安田善次郎の生き方を目標とした旧・安田銀行の新名称「富士銀行」と、舟橋甚重の姓名の頭文字を組み合わせたものとされています。再開当初は、資金調達のために家財道具を売り払い、サツマイモと小麦を交換してパンの原材料を確保するなど、苦労を重ねました。その後、配給パンの製造許可を得て、本来のパン製造を再開しました。

富士製パンの設立と大手製パン会社への成長

1951年（昭和26年）2月6日、名古屋市瑞穂区に資本金50万円で（初代）富士製パン株式会社を設立し、和洋菓子の製造・販売も再開しました。1952年（昭和27年）には本社・名古屋工場を移転し、オートメーション化した連続製パン機を導入するなど、生産体制の近代化を進めました。1960年（昭和35年）には、日本で初めて全商品の自動包装化を実現しました。

1959年（昭和34年）の伊勢湾台風では、被災者に救援パンを提供し、その包装パンが好評を博しました。1964年（昭和39年）には、アメリカのアーノルド・ベーカーズ社と冷凍パン技術で提携し、1966年（昭和41年）にはフジパンストアー株式会社を設立し、インストアベーカリー事業に進出しました。こうした事業拡大により、中小の製パン業者が苦境に立たされる一方、フジパンは大手製パン会社としての地位を確立しました。

提携による事業拡大

1969年（昭和44年）末には、食パンラインの先駆けであった「新日本製パン」の株式を70%取得し、資本提携しました。1970年（昭和45年）には、「昭和堂」と「（2代目）冨士製パン」を合併し、ビスケットメーカーの富士製菓を設立、アメリカのサンシャイン社と技術提携しました。さらに、ピザメーカーのインターナショナル・アイセプタンス社と提携し、ピザハウス「ポルポ」をオープンしました。また、ユニーとの共同出資で「株式会社富士カントリー」を設立し、ゴルフ場経営にも参入しました。

1978年（昭和53年）には、サンドイッチチェーン「フジクック」の1号店を出店し、日本マクドナルド向けのパンズの納入を開始しました。

提携による地方・海外進出

1980年代には、地方の製パン会社との提携や買収を通じて、事業規模を拡大しました。永井パン、瀬戸内パンとの業務提携を行い、中国・四国地方での生産・販売を強化しました。1984年（昭和59年）には、日魯漁業（現マルハニチロ）と業務提携し、あけぼのパン株式会社を傘下に収めました。海外進出も積極的に進め、1985年（昭和60年）にはハワイに、1986年（昭和61年）には香港に工場を開設しました。また、1987年（昭和62年）からはフィリピンでの生産を開始しました。

平成以降の事業展開

1990年代以降は、主力の製パン事業に加えて、ベーカリー事業、弁当・総菜・調理パンなどの製造販売事業を強化しました。1993年（平成5年）には、「かんたんトースト」や「本仕込」などの主力商品を発売しました。2000年代には、デリカ事業の中間持ち株会社を設立し、事業の集約化を図りました。

沿革

1922年（大正11年）：舟橋甚重が「金城軒」を創業
1942年（昭和17年）：企業整備令により強制廃業
1946年（昭和21年）：パン委託加工工場「富士精糧工業」として再開
1951年（昭和26年）：（初代）富士製パン株式会社を設立
1963年（昭和38年）：フジパン株式会社に社名変更
1966年（昭和41年）：フジパンストアー株式会社を設立
1978年（昭和53年）：日本マクドナルド向けパンズ納入開始
2006年（平成18年）：フジパングループ本社株式会社に社名変更、製造部門をフジパン株式会社に分割

主な製品

本仕込シリーズ：1993年（平成5年）に発売された主力商品。もっちりとした食感が特徴の食パン。
ネオバターロールシリーズ：液状マーガリンを注入した、塗る手間が省けるロールパン。
スナックサンドシリーズ：具材を挟んで圧着したサンドイッチ。
アンパンマンシリーズ：子供向けキャラクターパン。
黒コッペ、ぶどうぱん：定番の菓子パン。

主な事業所

豊明工場（愛知県豊明市）
西春工場
枚方工場（大阪府枚方市）
東京工場（埼玉県八潮市）
武蔵工場（埼玉県入間市）
横浜工場（神奈川県横浜市）
千葉工場
熊本工場（熊本県）
東北フジパン仙台工場（宮城県）

グループ会社

あけぼのパン株式会社
株式会社九州フジパン
株式会社中国フジパン
株式会社東北フジパン
タカラ食品株式会社
株式会社ナガイパン
株式会社富士エコー
株式会社エフベーカリーコーポレーション
フジパンストアー株式会社
九州フジパンストアー株式会社
北越フジパンストアー株式会社
株式会社ベーカリーシステム研究所
日本デリカフレッシュ
株式会社フジデリカ
（2代目）株式会社シルビア

社会貢献活動

エリザベス・アーノルド富士財団：製パン技術の向上や育英活動を支援。
民話テレホンサービス：「とんとむかし あったとさ」という民話のテレホンサービスを提供。
昔話動画サービス：BS-TBSで放送中のアニメ番組「むかしばなしのおへや」を支援。
少年サッカー：小学生を対象とした「フジパンCUP」を全国各地で開催。

販売促進関係

「山は富士山日本一、パンならフジパン日本一」というキャッチフレーズで宣伝を展開。
1970年大阪万博に「フジパン・ロボット館」を出展。

歴代CM出演タレント

森七菜（スナックサンド、ネオバターロール）
* 綾瀬はるか（本仕込）

まとめ

フジパンは、創業から100年以上の歴史を持つ老舗製パン会社です。常に時代の変化に対応し、パン製造だけでなく、多様な事業を展開することで、今日の地位を築き上げました。これからも、日本の食文化を支える企業として、さらなる成長が期待されます。

もう一度検索