フジ矢

フジ矢株式会社は、1923年に創業した老舗工具メーカーで、ペンチやニッパーなどの手工具を中心に製造・販売しています。本社は大阪府東大阪市にあり、「FUJIYA」ブランドとして広く知られています。創業者の道本佐一郎が、15歳でペンチメーカーの見習工としてキャリアをスタートさせ、その後独立してペンチ工場を設立したことが始まりです。

戦前は、鉄道レールを再利用したペンチを手作業で製造していましたが、昭和10年前後には、軟鋼を浸炭焼入れすることで強度と靭性を向上させたペンチの大量生産を実現しました。第二次世界大戦中は、陸軍や海軍の要請に応じ、馬蹄用釘抜き工具や航空機用工具などを製造し、「富士矢」マークの工具が軍需品として広く使用されました。

戦後、復興需要とともにペンチの需要が急増し、品質を重視したモノづくりが「富士矢」ブランドを確立。1946年には通信省の指定工具となり、電信事業や電力会社、国鉄などでも使用されるようになりました。1951年には、初のペンチJIS指定工場となり、品質の高さが公的に認められました。国内ペンチ市場では27%～28%のシェアを誇り、トップメーカーとしての地位を確立しています。現在では、約500種類ものアイテムを製造しています。

1998年には、29歳という若さで3代目社長に就任した野崎恭伸氏が、ITを活用した経営改革を推進しました。経済産業省のIT活用型経営革新モデル事業において、販売見込みと生産を連動させることで、大幅なコスト削減に成功しました。また、社標を「日本一の富士山と岩盤をも砕く強い矢」を意味するデザインに変更し、ブランドイメージを一新。製品開発においてもデザイナーを参加させ、パッケージも含めてデザイン性を高めました。

2004年には、中国の上海市に営業拠点を設置し、海外展開も積極的に進めています。現在、東大阪本社工場とベトナム工場でペンチ類を生産しており、国内90%、輸出10%の販売割合となっています。

フジ矢の沿革を辿ると、1923年に道本鉄工所として創業し、ペンチの生産を開始。1938年には、戦時中に陸軍の監督工場に指定され、富士矢マーク入りペンチを生産しました。1944年に組織変更し大阪ペンチ株式会社となり、1951年にペンチのJIS指定工場となりました。その後、ラジオペンチ、強力ニッパ、斜ニッパと順次JIS指定工場となり、1973年にフジ矢ペンチ株式会社、1993年にフジ矢株式会社と社名を変更。2000年には品質管理システムISO9002を取得、2002年にシンボルマークとロゴを刷新。2003年にはISO9001:2000を取得し、品質管理体制を強化しました。

また、2004年には関西の工具メーカー8社で「アクティブ-21の会」を結成し、同年上海事務所を開設。2007年にはベトナムに100%出資の製造子会社を設立し、2008年には本社工場、2009年にはベトナム工場が新JIS認証を取得しました。

フジ矢は、数々の受賞歴も誇っています。2003年には製造ラインのIT化で中小企業総合事業団理事長賞、2005年に「関西IT活用企業百撰」優秀企業、2006年に「全国IT経営百選」最優秀企業、同年にITでの功労が認められ関西情報化功労者・近畿経済産業局長賞を受賞。2007年には「元気なモノ作り中小企業300社」に選出され、東大阪市長より感謝状が授与されました。さらに、2008年には中小企業IT経営力大賞「IT経営実践企業」を受賞、「東大阪モノづくり大賞」銀賞も受賞しています。

フジ矢の商標権は、国内登録と海外登録されており、旧デザインから新デザイン、社名などの商標が登録されています。

フジ矢株式会社は、伝統と革新を融合させ、高品質な工具を国内外に提供し続けています。

もう一度検索