フセーヴォロド・ガルシン

フセーヴォロド・ミハイロヴィチ・ガルシン（1855年2月14日 - 1888年4月5日）は、ロシアの小説家であり、その作品は人間の心理や社会問題に深く切り込んでいます。代表作には『赤い花』、『四日間』、『信号』などがあります。

生涯

ガルシンは、現在のウクライナ領であるエカテリノスラフ県で生まれました。貴族の家庭に育ち、幼少期からトルストイなどのロシア古典文学や、ユーゴー、チェルヌイシェフスキーといった作家の作品に触れ、文学的な素養を培いました。

1863年、一家でペテルブルクへ転居。この頃から精神的な問題を抱えるようになり、生涯にわたって苦しむことになります。工業専門学校に進学しますが、1877年に露土戦争が開戦すると従軍を志願し、ブルガリアへ赴きました。この戦地での経験が、彼の作品に大きな影響を与えることになります。

『四日間』や『戦争情景』といった作品は、従軍経験に基づいて書かれました。戦場の悲惨さや兵士の苦悩を生々しく描き出し、読者に強い印象を与えました。

1883年には医学生のナジェージダ・ニコラエヴナと結婚し、彼女を題材とした作品『ナジェージダ・ニコラエヴナ』を執筆しました。しかし、精神疾患の症状が悪化し、創作活動は停滞してしまいます。

1888年、コーカサスでの転地療養を試みる直前に、飛び降り自殺を図り、その傷がもとで33歳という若さで亡くなりました。

作品の特徴

ガルシンが生涯に残した作品は約20作と多くはありません。しかし、その内容は非常に濃密で、人間の心の奥底にある苦悩や葛藤を鋭く描き出しています。

初期の作品は、自身の戦争体験に基づいたものが多く、戦場の現実や人間の狂気を描いています。また、学生時代には画家のヴェレシチャーギンらと交流があり、美術評論も手がけました。

1877年から1880年にかけては、創作活動に没頭できた時期であり、『邂逅』、『従卒と士官』、『画家たち』、『アッターレア・プリンケプス』など、多くの作品がこの時期に書かれました。

その後、精神疾患の発作に苦しみ、精神病院での療養生活を送る中で、『あかい花』や『夢がたり』といった作品を執筆しました。また、歴史小説の執筆も計画していましたが、彼の死によって実現することはありませんでした。

日本では、二葉亭四迷や神西清などがガルシンの作品を翻訳・紹介し、太宰治も彼に傾倒したことで知られています。

主要な著作

四日間（1877年）
戦場風景-アヤスラル戦闘-(1877年)
事件(1878年)
ごく短い小説(1878年)
臆病者(1879年)
邂逅(1879年)
画家たち(1879年)
従卒と士官（1880年）
アッタレーア・プリンケプス（1880年）
夜(1880年)
夢がたり（1882年）
ペテルブルグ便り(1882年)
兵卒イワーノフの回想より(1883年)
あかい花（1883年）
熊(1883年)
がま蛙と薔薇の花(1884年)(童話)
ナジェージダ・ニコラーエヴナ(1885年)
騎人アゲイの話(1886年)
蛙の旅行家(1887年)(童話)
信号（1887年）

参考文献

『あかい花』神西清訳（岩波文庫）
『ガルシン全集　全1巻』中村融訳　(青娥書房) ~現在では絶版~

外部リンク

ガルシンの主要著作（ロシア語）
ガールシン フセヴォロド・ミハイロヴィチ：作家別作品リスト - 青空文庫

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