神西清

神西清

神西清（じんざい きよし、1903年11月15日 - 1957年3月11日）は、日本のロシア文学者、翻訳家、小説家、文芸評論家として知られています。

生涯

1903年、内務省官僚の息子として東京に生まれた神西清は、幼少期に父の転勤で各地を転々としました。孤独な少年時代を過ごし、1912年には父をマラリアで亡くします。1916年、東京府立第四中学校に入学。従兄である北村寿夫の影響で文学に親しみ、竹山道雄と生涯の友情を育みます。

1920年、旧制第一高等学校に進学。堀辰雄と出会い、親交を深めました。当初は建築家を志望していましたが、フランス象徴詩に傾倒し文学の道へ。東京外国語学校露西亜語学科に進み、1925年には竹山や堀と共に同人誌「箒」を創刊し、戯曲や小説、詩を発表しました。

1928年から1929年にかけて北海道大学図書館に勤務。その後、東京電気日報社へ移ります。1931年にソ連通商部を退職し、文筆業に専念。「雪の宿り」などの短編小説を発表しました。後半生は鎌倉市に居を構え、静かに過ごしました。

戦後の文芸運動では、岸田國士らの雲の会に参加。チェーホフの戯曲翻訳を通じて文学座などの演劇活動に関わり、三島由紀夫、福田恆存、中村光夫らと交流を深めました。

1956年、舌癌を発症。治療の甲斐なく1957年に自宅で死去。53歳でした。遺骨は鎌倉市山ノ内の東慶寺に埋葬されています。

作品と業績

神西清は、アントン・チェーホフ、イワン・ツルゲーネフ、アレクサンドル・プーシキン、フセーヴォロド・ガルシンなど、ロシア文学の翻訳に尽力しました。アンドレ・ジッドの『田園交響楽』などフランス文学の翻訳も手掛けています。特にチェーホフの作品においては、『桜の園』、『三人姉妹』、『かもめ』などの翻訳が多くの演劇で用いられ、「全集」の完訳も目指しました。

チェーホフ全集は、彼の死後、弟子である池田健太郎や後輩の原卓也らが引き継ぎ完成させました。全集刊行に際し、三島由紀夫は翻訳を「結婚」と称賛しました。

受賞歴

1937年：翻訳の業績に対し、第3回池谷信三郎賞を受賞。
1951年：『ワーニャ伯父さん』の翻訳で芸術選奨文部大臣賞を受賞。

家族・親族

父：神西由太郎（内務省官僚）
母：神西止（岩崎衛生の五女）
義父：木原猷胤（母の再婚相手）
妻：神西百合
長女：神西敦子（ピアニスト、大学教員）

著作

神西清全集（全6巻）
垂水 神西清作品集
詩と小説のあいだ
恢復期・垂水・見守る女・母たち
月が消えた話
少年・地獄・母たち
灰色の眼の女
散文の運命
神西清詩集
神西清 死児変相　日本幻想文学集成19
雪の宿り 神西清小説セレクション

翻訳

ドストイエフスキイ『永遠の夫』
チェーホフ『犬を連れた奥さん』
プーシキン『スペードの女王』
トウルゲーネフ『散文詩』
チェーホフ『シベリヤの旅 他三篇』
ドストエーフスキイ『スタヴロギンの告白』
『チエーホフの手帖』
アンドレ・ジイド『田園交響楽』
チェーホフ『決闘・妻』
トゥルゲーネフ『娘への手紙』
ガルシン『紅い花』
レスコフ『新世界文学全集 僧院の人々 年代記』
プーシキン『ベールキン物語』
ジャック・シャルドンヌ『ロマネスク』
アファナーシェフ『お母さんの影 ろしあ民話選』
『プーシキン遺珠』
プーシキン『侠盗記』
『プーシキン短篇集』
プーシキン『荘園ものがたり』
プーシキン『大尉の娘』
『ドストイエフスキイ歴程』
レスコーフ『邪恋』
レスコーフ『僧院の人々』
おのれ・ど・ばるざっく『おどけ草紙 こんと・どろらていく抄』
レスコーフ『真珠の首飾り』
ドストエーフスキイ『虐げられた人々』
『ロシヤ恋愛小説集』
シャルドンヌ『愛をめぐる随想』
マルセル・エーラール『ロシヤ文学史』
ツルゲーネフ『はつ恋』
プーシキン『ドゥブローフスキイ奇譚』
チェーホフ『ヴァーニャ伯父さん』
エルザ・トリオレ『マヤコーフスキイ 詩と思い出』
バジョーフ『石の花』
ゴーリキイ『どん底』
スローニム『ロシア文学史』
スローニム『ソビエト文学史』
『チェーホフ戯曲集』
『チェーホフ小説集』
チェーホフ『かもめ・ワーニャ伯父さん』
チェーホフ『桜の園・三人姉妹』
チェーホフ『カシタンカ・ねむい　他七篇』

資料文献

『人物書誌大系23　神西清』
『神西清蔵書目録』
『神西清日記 Ⅰ・Ⅱ』
『複製　神西清翻訳原稿Ⅰ　チェーホフ作「桜の園」』
『複製　神西清翻訳原稿Ⅱ　チェーホフ作「ヴーニャ伯父さん」』
『複製　神西清翻訳原稿Ⅲ　チェーホフ作「三人姉妹」』
石内徹『神西清文藝譜』
石内徹『神西清文業瑣記』
小林実『神西清の散文問題』
遠藤周作「神西清先生のこと」

外部リンク

* 神西 清：作家別作品リスト（青空文庫）

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