フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)

フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)(DEHP) の詳細解説

フタル酸ビス(2-エチルヘキシル)（DEHP）は、無色の粘性液体で、油に溶ける一方、水には溶けない[有機化合物]]です。主な用途は[[ポリ塩化ビニル]などのプラスチック製品への可塑剤としてであり、その柔軟性や加工性を向上させる役割を果たします。DEHPは、無水フタル酸と2-エチルヘキサノールを反応させることで製造され、年間数十億キロもの規模で生産されています。

DEHPの特性と用途

DEHPは、費用対効果が高く、様々な特性を有しているため、幅広い用途に使用されてきました。PVC製品には、1%から40%ものDEHPが含まれている場合があります。具体的には、以下の用途が挙げられます。

可塑剤: PVC製品の柔軟性向上
油圧油: 機械の潤滑
コンデンサーの誘電体: 電子機器部品
サイリュームの溶媒: 発光体の溶解

しかし、DEHPは環境ホルモンの一種であると疑われており、その毒性や人体への影響が懸念されています。そのため、近年では、多くの国でDEHPの使用が規制されています。欧州連合のRoHS指令をはじめ、玩具や育児用品への使用は規制されており、テレフタル酸ジオクチルなどの代替物質が使用されるようになっています。

環境への影響と規制

DEHPは蒸気圧が低く、室温では揮発しにくいですが、高温下では揮発しやすくなります。そのため、PVC製品の製造や加工過程で、DEHPが空気中に放出される可能性があります。また、DEHPは土壌や水系に蓄積し、食物連鎖を通じて人体に摂取される可能性もあります。牛乳やチーズなど、脂肪分が多い食品からDEHPが検出される事例もあります。

各国では、DEHPの環境への影響を懸念し、様々な規制が導入されています。アメリカ食品医薬局(FDA)は、飲料容器へのDEHP使用を禁止し、[アメリカ合衆国環境保護庁]は飲料水のDEHP基準値を設定しています。日本では、2002年に厚生労働省が食品容器包装や玩具へのDEHP使用を禁止する通知を出しました。

医療機器への使用とリスク

DEHPは、かつて点滴チューブ、カテーテル、血液バッグなどの医療機器にも広く使用されていました。これにより、患者がDEHPに曝露する機会が増加し、特に乳幼児や透析患者などへの影響が懸念されています。FDAは、DEHPを含まない代替物質の使用を推奨する通知を出しています。

DEHPの代謝と毒性

DEHPは、体内では代謝され、MEHPを経てフタル酸に分解されます。急性毒性については、ラットやウサギを用いた実験でデータが得られていますが、より重要なのは、内分泌攪乱物質としての可能性です。欧州委員会は、DEHPの使用規制やPVC製玩具の廃絶を推進しています。

まとめ

DEHPは、その有用性とリスクの両面を考慮する必要がある物質です。コストパフォーマンスに優れる一方で、環境や健康への影響が懸念されているため、使用状況や代替物質の開発、そして適切な規制が重要となります。今後の研究や規制の動向を注視していく必要があります。

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