フッター派

フッター派：信仰と共同体の歴史

フッター派は、16世紀に生まれたアナバプテストの流れを汲むキリスト教の一派です。創始者であるヤーコブ・フッターの名に因み、その名称で呼ばれています。ヤーコブ・フッターは1500年頃に南チロルで生まれ、1536年に火刑に処されました。彼は1533年からモラヴィアのアウステルリッツで再洗礼派のグループを指導し、財産共有を基盤とした共同体生活を確立しました。この共同体主義は、後のフッター派の生活様式を特徴付ける重要な要素となります。

移住と共同体の発展

フッター派は、宗教的迫害を逃れるため、16世紀から17世紀にかけて、モラヴィアからスロバキア、ハンガリー、トランシルヴァニア、ワラキアへと幾度も移住を繰り返しました。1770年にはロシアに移住しますが、1870年にはロシアでの若者徴兵の危機を機にアメリカ合衆国サウスダコタ州へと移住します。その後、第一次世界大戦中のアメリカの徴兵制度を避けるため、多くの信徒がカナダに移住しました。現在では、北アメリカ、特にカナダのアルバータ州やマニトバ州に約260の集落があり、およそ4万人と言われる信徒が暮らしています。

独自の文化と生活

フッター派は、外界との接触を最小限に留め、独自の文化と信仰を固持しています。アーミッシュと同様に、伝統的なドイツ語の方言（フッター派ドイツ語）を話し、政治活動には参加しません。また、離婚を認めず、避妊も行わないため、人口増加率は非常に高く、集落が大きくなると分村（Branching-out）を行います。この分村に必要な資金は、高度な農業技術を用いて生産された農産物を外部に販売することで得られています。フッター派の農業は自給自足を超える生産性を誇り、地域経済にも貢献しています。

信仰と社会

フッター派の信仰は、聖書の教えに基づいた厳格なキリスト教信仰です。彼らは共同体生活を重視し、すべての財産を共有します。個人の所有欲を抑制し、互いに協力して生活を営んでいます。外部からの影響を最小限に抑え、独自の文化と伝統を守りながら、現代社会の中に独自の共同体を築き上げています。彼らは、現代社会の価値観とは異なる生活様式を選択することで、信仰を貫き、独自のアイデンティティを保っています。

日本におけるフッター派

日本においては、栃木県に「新フッタライト大輪キリスト教会」が存在することが知られています。ただし、北米のフッター派とは、規模や歴史、そして生活様式においても大きな違いがあります。

まとめ

フッター派は、宗教的迫害の中で生まれた共同体であり、独自の文化と信仰を何世紀にもわたって守り続けてきました。彼らの生活様式は現代社会の価値観とは異なるかもしれませんが、強い信仰と共同体意識によって支えられた、独特の社会システムを構築し、現在も存続しています。彼らの歴史と文化は、現代社会における信仰と共同体のあり方を考える上で、貴重な示唆を与えてくれます。

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