フナムシ

フナムシ（船虫）についての解説

フナムシ（船虫、学名：Ligia exotica）は、甲殻綱に属し、等脚目フナムシ科の一種として広く分布しています。日本を含む熱帯や温帯の海岸に生息するこの生物は、代表的な海岸動物であり、多くの種類の海岸環境で見られます。

種類の分類

2024年に行われた研究により、フナムシは異なる3種に分けられることが確認されました。それぞれ「トライフナムシ」、「アオホシフナムシ」、そして「フタマタフナムシ」と名付けられています。これにより、フナムシに対する理解がさらに深まっています。

形態的特徴

フナムシは体長が最大で約5cmと、等脚類の中でも比較的大型です。その体は上から押しつぶされたような扁平で、多数の節から成り立っています。7対の歩脚を持ち、頭部には長い触角と大きな複眼があります。また、尾部には2つに分かれた尾脚が1対あり、これらが動き回る際に重要な役割を果たします。体色は上面が鈍い光沢のある黒色で、個体によっては淡黄色のまだら模様や褐色の広い縁取りが見られます。特に夜間は体色が昼間よりも淡くなる傾向があります。

生態と行動

フナムシは動きが非常に敏捷で、外敵が接近すると、岩や隙間に素早く逃げ込むため捕まえるのが難しい生物です。海岸近くに生息していますが、基本的には水中に入ることはありません。万が一海に落ちた場合でも、瞬時に泳ぐことはできるものの、長期間水中にいると溺死してしまう危険があります。

彼らは雑食性であり、藻類や魚の死骸、さらには釣り人が残した食品も食べることで、海岸の「掃除役」として機能しています。人間に対し興味を示し、岩礁海岸で寝転んでいると時折噛まれて痛みを感じることもあります。その天敵としては、イワガニやアカテガニ、イソヒヨドリ、シギ、チドリが挙げられ、特に海に落ちた個体は魚によって捕食されることがあります。

繁殖に関しては、雌の腹部には卵を抱える保育嚢があり、卵をしっかりと保護しています。卵は最初は透き通った橙色ですが、孵化が近づくと黒ずんできます。孵化した幼体は親と似た形状をしており、しばらくの間はメスの保育嚢に掴まって生活します。このため、台所で捕まえると思わぬ形で幼体が現れることがあります。

利用と別名

フナムシはその体が比較的小さく、捕獲は難しいものの、釣りの餌としてよく利用されています。他の魚類の餌にもなりやすいため、釣り人にとっては優れた存在です。しかし、その姿や素早い動きがゴキブリに似るため、嫌う人も少なくありません。また、この生物は英名で「wharf roach（埠頭のゴキブリ）」とも呼ばれています。日本国内では、地域により異なる別名があり、長崎県及び鹿児島県では「アマメ」、長崎県の一部では「アモメ」などと呼ばれたり、さらには「ウミムシ」といった呼称も存在します。

食味評価

食用としての評価は低く、強い苦みと腐敗臭があることから、非常にまずいとされることが多いです。しかし、この臭いは彼らの食性に由来するとも考えられています。そのため、脚の付け根にほんのわずかに甲殻類独特の風味が感じられる場合もあります。

近縁種

フナムシの近縁種には、「シー・スレーター（Ligia oceanica）」や「ヒメフナムシ（Ligidium japonicum）」が存在します。シー・スレーターは欧州から北米までの広範囲に分布し、フナムシよりも若干小型です。一方、ヒメフナムシはフナムシと似ていますが、体長が1cm未満であり、主に森林の落葉の下で生活しています。

このように、フナムシは海岸の生態系において重要な役割を果たす生物であり、多様な環境の中で独自の生態を形成しています。

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