フモニシンB1

フモニシンB1：トウモロコシに潜むカビ毒

フモニシンB1は、トウモロコシ、小麦などの穀物に含まれるマイコトキシン（カビ毒）です。 Fusarium proliferatum や F. verticillioides といった Fusarium（フザリウム）属のカビによって産生されます。このカビ毒は、私たちの体内で重要な役割を果たすセラミド合成酵素を阻害することで知られています。

世界各地で、トウモロコシにフモニシンB1が混入していることが報告されており、その濃度はmg/kg単位で測定されています。特に、トウモロコシ製品を主食とする地域では、人々が日常的にμg～mg/日単位でフモニシンB1を摂取していると考えられています。摂取量は地域や食生活によって大きく異なるでしょう。

動物実験による毒性:

動物実験において、フモニシンB1は肝臓や腎臓に毒性を示すことが明らかになっています。投与された動物の肝臓や腎臓では、アポトーシス（細胞の自殺）の後、再生を促す細胞の増殖が活発になるという、組織変化が見られました。
急性毒性はそれほど強くありませんが、家畜においては深刻な健康被害を引き起こすことが知られています。具体的には、ウマの大脳白質軟化症やブタの肺水腫の発生原因として特定されています。これらの病気は、スフィンゴ脂質代謝の阻害や心臓血管機能の不全に関連していると考えられています。

発見と類縁体:

フモニシンB1は1988年に単離され、その化学構造が決定されました。名前の由来は、この物質を産生するカビの学名 Fusarium moniliforme にあります。その後、フモニシンB2、B3、B4といった類縁体も発見され、それらの毒性や影響についても研究が進められています。

今後の課題:

フモニシンB1の毒性メカニズムや、人体への影響について、さらなる研究が必要です。特に、長期間の低濃度摂取による健康への影響や、効果的な対策方法の開発が重要な課題となっています。トウモロコシを主食とする地域では、フモニシンB1の汚染状況の把握と、安全な食料供給体制の構築が急務と言えるでしょう。また、フモニシンB1の産生を抑制する技術開発も、今後の重要な研究テーマの一つとなるでしょう。

関連情報:

フモニシン
フモニシンB2
（英語）Hazardous Substances Data Bank
（英語）Detailed information about mycotoxins
（英語）International Agency for Research on Cancer (IARC)- Good review on Fumonisin B1
（英語）Fumonisin Toxicosis, Merck Veterinary Manual

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