フョードル・シャリアピン

フョードル・イワノヴィッチ・シャリアピンについて

フョードル・イワノヴィッチ・シャリアピン（1873年2月13日 - 1938年4月12日）は、ロシアのカザンで生まれたオペラ歌手で、バスの声域を持つ芸術家として、20世紀初頭に大いに活躍しました。彼の魅力は、力強い美声と卓越した表現力にあり、その演技は「歌う俳優」と称されるほどでした。オペラの演技スタイルに革新をもたらし、その名声は広く認知されました。

生い立ちとキャリアの始まり

シャリアピンは、カザンの小さな町で、貧しい家庭に生まれ育ちました。父は小役人であり、幼少期は靴屋や工場でも働き、貧困の中で成長しました。しかし、彼の音楽への情熱は強く、17歳の時に地方の小歌劇団で合唱員として歌い始めました。やがて彼は役者としても注目を浴びるようになり、1892年から1893年にかけて、トビリシで声楽を本格的に学びました。

1894年にはサンクトペテルブルクの帝室マリインスキー劇場に所属し、その後モスクワのボリショイ劇場にも招かれます。ボリショイ劇場では多くのロシアオペラの主役を演じ、その地位は不動のものとなりました。彼の演技や歌声は、多くの観客を魅了しました。

海外公演と国際的な名声

1901年からは海外公演を開始し、イタリアのミラノ・スカラ座にも出演。この公演では著名な指揮者トスカニーニの指揮のもと、ボイトの『メフィストーフェレ』に参加しました。さらに、1907年にはニューヨークのメトロポリタン歌劇場に出演し、当初は評価が今ひとつでしたが、1921年の再登場時には喝采を浴びました。

多くのリサイタルを行い、特にロシア民謡を歌うことで評価を高め、パリやロンドンでも人気を博しました。彼は1907年から1912年にかけてパリに招かれ、リサイタルを通じて国際的な名声を確立しました。また、彼の代表作である『ボリス・ゴドゥノフ』を演じ、その存在感を強く示しました。

ロシア革命と亡命

1917年のロシア革命が発生すると、彼は一時的にソビエト政権から好待遇を受けました。しかし、次第に政府への反発を理由に不遇を経験し、1921年には亡命を余儀なくされます。以後はフランスのパリに移住し、世界各地での公演を続けました。

来日と影響

1936年、日本への訪問時には、東京や名古屋、大阪で公演を行い、多くの観客を魅了しました。公演を重ねるにつれて体調も整い、クラシック音楽ファンのみならず一般の人々にもその名声を広めました。彼の来日は大きなセンセーションを巻き起こし、特に帝国ホテルでのエピソードは有名です。

晩年と録音

1938年4月、シャリアピンはパリで亡くなりました。彼の録音は数多く、特に『ボリス・ゴドゥノフ』の録音（1929年 - 1931年）は最も著名です。また、数多くのロシアオペラの作品に寄与し、音楽界への影響は計り知れません。200を超えるレコーディングが現在でも残されています。

シャリアピン・ステーキ

彼の名前にちなんで名付けられた「シャリアピン・ステーキ」も有名で、日本滞在中に柔らかいステーキを求めたことがその由来です。料理長が彼のために考案した料理が、今では人気メニューとして知られています。

シャリアピンは、その多才さと独自の魅力で、今なお多くのファンに愛され続けています。

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