フライングスタート (放送)

フライングスタートに関する詳細

放送における「フライングスタート」は、テレビやラジオ番組が正確な定時ではなく、少し早めにスタートする手法です。通常、番組は00分や30分の整った時間から放送開始されることが一般的ですが、フライングスタートを取り入れると、例えば54分や55分、または29分といった具合に、少し前倒しで放送が行われます。この編成手法は「またぎ編成」とも呼ばれています。

フライングスタートの根底には、1時間あたりのCMの総数は変わらないという観点があります。具体的には、59分や54分の番組でもCMの放送時間は同じため、CMを番組内に含めるか、番組間に挟むかの違いのみです。この仕組みを活用し、前番組が終了する直後にCMなどを挟まず、即座に次の番組を放送する（ステブレレス）というスタイルも多く見受けられます。このような戦略は、特に高視聴率が期待できる番組の場合に効果が高いとされているのです。

実際の放送においては、例えば日本テレビ系列の『ザ!鉄腕!DASH!!』では、新聞のテレビ欄では19:00と表示されているにも関わらず、実際には18:59:30から放送されることがあります。この例のように、番組開始時刻を30秒から1分程度前倒して始めることはよくあります。また、54分から56分の間に放送内容の紹介やオープニングを行い、00分から本編を開始する形式も見られます。これにはローカル枠やクロスネット局への配慮が影響しており、多様な編成が行われています。

さらに、フライングスタートは「番組開始時刻」だけではなく、「番組開始日」を早めることもあります。帯番組の場合、改編期に新番組をスタートさせる際に、例えば4月1日ではなく、その前の週の月曜日から放送を開始することがあるのです。これは帯番組特有の戦略に該当します。

このようなフライングスタートは、日本では1970年に青森放送が『RABニュースレーダー』という番組を午前6:58に開始したことが初めての事例とされています。これは7:00から全国ニュースが放送されるため、番組タイトルや出演者の挨拶が不十分になることを避けるための措置でした。また、1992年3月30日には日本テレビ制作の『ジパングあさ6』が5:59:30にスタートしたこともあり、この番組が全国ネット番組としてフライングスタートの先駆けとされています。

その後、1994年4月には日本テレビ系列の『マジカル頭脳パワー』が初めてゴールデンタイムにフライングスタートを導入しました。この番組が高視聴率を記録したことで、他の放送局も次第にこの手法を採用するようになりました。

アメリカでも類似の手法が存在し、ローカルニュースが視聴者に早く伝わることを目的に、予定より早めに番組を開始するケースが多いです。一方で、視聴者に特定の曜日や時間の認知を促進するために、2017年にはTBSがフライングスタートを廃止した事例もあります。しかし2022年以降、再度いくつかの番組でフライングスタートが実施されています。

例えば、2020年から2021年にはテレビ朝日系列の一部地域で、19時台の番組が18:45から開始される取り組みが行われました。ただし、この試みは限られた地域のみで行われ、多くの地域では正時放送が行われていました。結果として、2021年10月以降は、月曜から木曜の番組が元の19:00の開始時刻に戻された事例も見られました。金曜に放送される『ザワつく!金曜日』は唯一、フライングスタートが続いています。

このように、フライングスタートは放送業界における戦略的な手法であり、視聴率や視聴者の関与を高める重要な要素となっています。

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